「5年ほど前、テレビ番組の“日本の鍋ベスト5”でトップに選ばれたこともあります。京橋店には少人数の部屋もあれば、50~60人でも入れる。法事にもよく使われていました。やめるって理由がわからない」と木下さんは話す。

 近所のイベント会場で働く男性も、「食べたことあるけど、やっぱりいい。土日もお客さんが多かったし、銀座で働く女性も仕事前の同伴でよく来ていました。さすがに4月は客足が遠のいたけど、これだけの店がそんな簡単にやめるとは……」と残念がる。

無借金経営なのに
突然の会社解散

 老舗の名店でも経営が行き詰まってつぶれることはある。ましてコロナ禍の下なら仕方がない。

 そう思われがちだが、筆者が入手した2019(令和元)年8月31日時点の貸借対照表によると、東京美々卯は無借金であり純資産は7億8691万円に上る。

 19年8月期は、新橋店、渋谷マークシティ店の閉店による売り上げ減、固定資産除去損もあって約1.6億円の経常赤字に沈んだが、2店の閉店で既存店売り上げが伸び、池袋店も2年目で1000万円の営業利益を出すなど本業は順調だった。

 新型コロナ感染症が広がると、テナントに入っていた百貨店内の店が休業を余儀なくされるなど売り上げは大きく落ち込んだが、手元資金はまだ残っていた。

 ところが同社は緊急事態宣言が解除される直前の5月20日、突然全6店を閉めた。約200人の従業員は退職同意書にサインを迫られ、応じなかった人は解雇された。

 会社解散について東京美々卯は、「資金があるうちに会社を解散し清算をしたほうが、各方面への影響が少ないと判断し、(今年)4月15日の取締役会にて正式に決定した」「現時点では、非常(ママ)事態宣言の解除の見通しが立たない」などと、同社は解散理由を説明する(5月27日付、従業員組合<全国一般東京地本・一般合同労組加盟>に出した佐藤社長名の文書)。

 だが、従業員らの記憶は、会社の説明と少し違う。