「清算」の方向が打ち出されたのは4月16日朝の店次長向け説明会だった。

 A取締役が「いつ沈む船かわからないから、社員は5月20日をもって下船していただく」と事業終了を説明。

「これは英断なのか」という店長からの質問にA取締役は、「誰もわからない、英断なのか愚策なのか」「正直なところ(東京美々卯の)役員3人とも納得いっていない」と、取締役会決定の翌日にもかかわらず迷いも口にした、という。

のれん分け後も残る
「本家」の影響力

 東京美々卯の役員は佐藤社長を含め3人だ。取締役全員が「納得いっていない」のなら、なぜ会社をたたむことになったのか。

 従業員らによると、説明会の10日前、4月6日午後に開かれた臨時店長会にそのヒントがあるという。

 A取締役が、テナントで入っている店の休業で資金繰りが厳しいこと、百貨店などに家賃減免交渉をしていることなどを報告した上、こんな事実を明かした。

「薩摩社長から、『今後の東京美々卯はどうなんだ。6月末で京橋の賃借契約切れるよね。この際、会社清算したほうがいいんじゃないか』と言われた」

 薩摩社長というのは、大阪にある美々卯の社長、薩摩和男氏のことだ。

 京橋店の土地は美々卯社長の薩摩氏が経営する不動産管理会社、美和ホールディングスの所有で、「東京美々卯は、月の売り上げの17%の家賃を毎月払っていました。その最低額が500万円でした」とある店長は説明する。

 賃借料が売り上げに連動するのはめずらしい。東京美々卯はそのほか、技術指導料も払っている(19年8月期には年880万円)。

 美々卯と東京美々卯は毎月会議を開いており、美々卯のホームページの「店舗のご案内」コーナーには、美々卯が直営する大阪16店、中部1店と区別なく、東京美々卯が運営する東京圏の6店も載っていた。また、東京美々卯の株式の43.6%は美々卯が所有している(19年8月期の決算資料による)。

 こうした事情を総合すると、東京美々卯は「のれん分け」後も、美々卯の子会社ないし一部門に近い位置づけだったように見える。