2019年に中学、20年に高校が共学化し、武蔵野女子学院から校名を変更。18年度に就任した日野田直彦校長によって、教育の大改革が進行中だ。既成の枠にとらわれない学校づくりは注目を集め、経済産業省「未来の教室」のモデル校にも選ばれている。

中学校・高等学校
日野田直彦校長
緑豊かな武蔵野大学中高のキャンパスでは、毎朝早くから生徒が校長室の前で「直さん」と呼ばれる日野田直彦校長を待っている。「コンビニを造ってほしい」といった要望から、「校則って何のためにあるの?」などの疑問まで、待つ目的はさまざまだ。同校では自分の考えや提案を“まず言ってみる”ことが奨励されている。
「生徒たちには、自由に発想し、臆することなく発言し、失敗を恐れずにチャレンジしてほしい」と日野田校長。
帰国子女だった日野田校長は大学を卒業後、民間教育や私立学校設立などの経験を積み、36歳で大阪府立箕面高等学校の校長に着任。偏差値50の公立高校を海外トップ大学へ多数進学者を出す進学校に改革、その手腕を買われて、18年に武蔵野大学中高の校長に就任した。
生徒参加型の授業で
マインドセットを育む
世界で活躍する人材になるには、英語力に加えて、多様性を認める、自分の哲学を持つ、暫定解を持つといったマインドセット(物事に取り組む基本姿勢や心構え)が必要だ。同校では生徒参加型の双方向な授業によって、そうした考え方や行動様式が自然に身に付くことを目指している。
マインドセットを育む授業の一つに英語と国語の教員が一緒に授業を担当する「言語活動」がある。生徒はテーマに沿って自由に意見を出すが、「人の意見を否定しない」というルールがある。それが担保されると、いろいろな意見が出て、グループでアイデアを共有し、発展させることができるからだ。
英語教育ではTOEFL iBT(R)※でハイスコアを取るためのプログラムを提供。TOEFLは限られた時間で自分なりの即時解を出す必要があり、「言語活動」で身に付けた思考を言語化する能力が役立っている。また、米国MIT(マサチューセッツ工科大学)への短期研修も実施。世界トップの教授たちや起業家から仕事における世界観や哲学を語ってもらったり、同大学の起業メソッド“24 Steps”を中高生用にダウングレードしたものを使い、イノベーティブな事業を生徒たちに提案させたりしている。
19年、武蔵野大学中学校は経済産業省の「未来の教室」実証事業のモデル校の一つに選ばれた。中学1年の数学の授業ではiPadにタブレット型AI教材「atama+(アタマプラス)」を導入し、教員と民間会社から派遣されたサポーターとが連携して授業内で用いた結果、数カ月で中学3年までの学習内容を終えた生徒もいたという。同校ではさまざまな教育プロジェクトが適宜実施され、その成果を検証しつつ、トライ&エラーを繰り返し実践しているのだ。
「大事なのは、生徒も教員も失敗しまくること、周りがそれを応援すること。そんな環境づくりが理想です。トライ&エラーの精神で、ワクワクする学校を生徒と一緒につくっていけたらと思います」(日野田校長)
※「TOEFL iBT(R)」……TOFL Internet Based Testのこと

https://www.musashino-u.ed.jp/