転職・就職 新14メガトレンド#8Photo:kentoh/gettyimages

日立製作所や資生堂、富士通など大手企業が相次いで採用を試みている「ジョブ型雇用」。こうした新たなトレンドは、ビジネスパーソンの「給料」にどんな影響を与えるのか。特集『転職・就職 新14メガトレンド』(全14回)の#8では、ジョブ型雇用移行の壁となる給与システムの課題、コロナ後の給料について解説する。(パーソル総合研究所シンクタンク本部上席主任研究員 小林祐児)

失業でも所得増加の米国
雇用は守るが「給料が下がる」日本

 4月、5月と緊急事態宣言発出の中で続いた実体経済の一斉緊縮の後、賃金にはどのような影響が出たのか――。各種統計によって、それが徐々につまびらかになってきている。

「毎月勤労統計調査」(6月23日発表分)によると、4月の実質賃金は前年同月比0.8%減と2カ月連続で減少。共通事業所による前年同月比の現金給与総額は1.9%減だった。そのうち一般労働者が1.6%減、パートタイム労働者が3.6%減と、やはりパートタイム労働者から賃金への直接的影響が表れた形だ。これらの影響は支出にも表れており、2020年4月の「家計調査」によれば、2人以上の世帯における実質消費支出は前年同月比11.1%減と大幅な落ち込みを見せた。

 日本の実情を把握するため、米国の現状と比較してみよう。米国では失業保険の申請件数が4000万件という未曽有の状況に陥っていることは、報道されている通りだ。4月の失業率は第2次世界大戦以降で最悪の14%台を記録した。

 しかし、驚くべきことに米国人の「所得」は増えている。2兆2000億ドルに上る救済措置(通称CARES法)によって拡充された失業手当の給付が、給与の減少分を大幅に上回ったからだ。

 手厚い給付によって企業、労働者の双方にとって解雇・失業へのインセンティブが高まり過ぎた結果、失業率の上昇につながっているといえる。働かなくてもこれだけ所得が増えるのだから、必死にしがみつくよりもいったん失業することを選んだ方がよいと考えてもおかしくないだろう。

 こうした米国の状況に対して、そもそも解雇規制が厳しい日本では、不況時も米国ほど失業者が増えることはない。08年のリーマンショックの際、日本は米国を上回る大きな経済的打撃を受けた。しかし、失業率の上昇に関しては、米国が10%を超えたのに対し、日本は5%台にとどまった。日本においても非正規労働者の雇用は守られにくく、その点ではセーフティーネットの整備が必要な状況であるものの、全体として米国と比較すると日本企業の雇用は守られているように見える。