9日間に渡って行われたベルリン世界陸上が幕を閉じた。

 大会の主役はウサイン・ボルト(ジャマイカ)。100mで9秒58、200mで19秒19という人間離れした世界新記録を作り、見る者の度肝を抜いた。

 終盤には日本選手の活躍も続いた。女子マラソンでは尾崎好美が銀メダルを獲得。北京オリンピックでの惨敗で沈滞ムードが漂っていた日本女子マラソン界を再び活気づける意味でも尾崎の快走は光った。

 やり投げの村上幸史の銅メダルも見事というしかない。かつて日本には溝口和洋というトップ選手がいた。が、その溝口でも世界大会では87年世界陸上の6位入賞が最高。努力と工夫を重ね、繰り返し挑戦したが、厚い壁にはね返された。その壁を村上は突き破ったのだ。もちろん、この種目での日本人メダル獲得は初。とんでもない快挙といえる。

 また今回は日本のエースであるハンマー投げの室伏広治が故障で欠場。フィールド種目に期待できるものはないといわれた中でのメダル獲得は、注目を浴びない種目の選手たちに希望を与えたはずだ。なお、村上が所属するのは自動車メーカーのスズキ。マイナー種目の選手をサポートし続ける同社の姿勢も併せて評価したい。

 100m×4リレー日本男子の北京オリンピック3位に続く4位も立派だ。五輪も今回も強敵アメリカがバトンミスで決勝に出てこなかったという幸運はあった。が、1位のジャマイカや2位のトリニダード・トバゴはもちろん、他のライバル国もパワーでは断然上。個々の選手の力を単純に比較したら予選通過も難しい。そのハンデをバトンパスなどのチームワークで補い、世界の4番目になったのだからすごい。メダルに届かなかったとはいえ、高く評価すべきである。

 というわけで多くの収穫があり、見どころもそれなりにあった大会だが、世間の注目度はあまり高くなかったようだ。ボルトが驚異的な世界記録を出した100mこそ、平日の早朝・午前4時45分という時間帯にもかかわらず6.8%という高視聴率(関東地区・瞬間)を記録したが、それ以外は午前0時前後の人々がまだ起きている時間帯でも10%を超えることは少なく、最終日の女子マラソンも18.1%に止まった。前回の大会(07年)は連日15%前後。女子マラソンは平均で22.8%、瞬間最高では41.3%にもなった。地元大阪で開催され、誰もが見やすい時間帯に競技が行われた前回とは条件が違い過ぎるが、それを割り引いても今回は盛り上がりに欠けた。