8月31日、新型「ミラージュ」が発売された。ミラージュは三菱自動車の社運を懸けた世界戦略車であり、全量がタイで生産される。タイ生産への一極集中が進む戦略に死角はないのか。

「とりわけ、生産現場で技術指導できる要員が不足しており、まもなくタイの駐在員を60人から110人へ増員する予定だ」と言うのは、益子修・三菱自動車社長。

 三菱自動車は、8月31日に発売した世界戦略車「ミラージュ」の投入を端緒に、タイ新工場の大増産体制を敷く。ミラージュは、日本のほか、欧州、東南アジアを中心に世界150カ国へ順次、輸出される。

 同社のタイにおける生産台数は2011年度の22.1万台から、12年度の44万台へ倍増となる見込みで、将来的には50万台規模まで拡大する。

 現在、三菱自動車は、大胆な生産拠点の再編成に着手している。冒頭のタイのほか、中国では、広州汽車集団との新合弁会社の設立認可が、今年後半にも下りる予定だ。

 さらに、11月にロシアでは、セミノックダウン(ある程度まとまった部品、半製品を輸出して現地で組み立てる)方式からコンプリートノックダウン(部品を輸出し本格的に現地生産する)方式へ移行し、量産体制が整う。タイに続き、中国、ロシア向けの駐在員も、大幅に増員する計画だ。

 一方、「アウトランダー」の生産を移管するなど、水島製作所(岡山県)で生産する車種を絞った。

 その結果、生産の海外シフトの流れが鮮明になった。今年1~6月の国内生産台数は、競合他社が東日本大震災の需要減の反動で軒並み増産となっているにもかかわらず、三菱自動車だけが唯一、前年割れとなった(図(1))。

【三菱自動車】<br />世界戦略車「ミラージュ」を投入<br />タイ生産“一極集中”リスクが顕在化