鶏卵生産会社の捜索で押収した資料が入ったとみられる段ボール箱を運び出す係官鶏卵生産会社の捜索で押収した資料が入ったとみられる段ボール箱を運び出す係官(7月4日撮影、東京都港区) Photo:JIJI

前法相の河井克行衆院議員(広島3区)と案里参院議員(広島選挙区)の夫妻による選挙違反事件で、東京地検特捜部は8日、2人を公職選挙法違反(買収)の罪で起訴した。法相経験者、しかも国会議員夫妻が揃って逮捕されるという異例の事件。現金を受け取った側に対する広島地検の捜査も続いていたが「一方的に渡された」として立件は見送りになる見通しで、事実上、捜査は終結した。被買収の“容疑者”だった地元・広島政界の関係者は冷や汗の日々から解放されるが、受領について一言も発していない議員らもいる。地元では大甘の処分に疑問の声や「受領の事実を認めず、説明責任も果たさないのは卑怯」と批判も聞かれる。(事件ジャーナリスト 戸田一法)

前法相を総括主宰者と認定

 起訴状によると、克行被告は昨年3月~8月、同7月の参院選で案里被告を当選させる目的で、地元の政界関係者や有力者ら延べ108人に対し票の取りまとめを依頼し、計2900万円余の現金を渡した。

 また案里被告は克行被告と共謀し、このうち5人に計170万円の現金を渡したとされる。

 また特捜部は、克行被告について選挙運動全体を指揮し、連座制の対象となる「総括主宰者」と認定した。公選法では総括主宰者の行為を「加重買収」と規定し、法定刑も重い。

 参院選の陣営幹部が「(克行被告が)すべてを取り仕切っていた」と口を揃えて供述。実際に案里被告の遊説日程や運動員の活動など、細かく指示していたとされる。

 これを受けて、夫妻の公判は起訴から100日以内の判決を目指す「百日裁判」になるが、被買収側が94人と異例の多さだけに長期化も予想される。

 克行被告は現金を渡した一部の事実を認めているが、買収の意図については否定しているという。