ゼネコンwithコロナ#2Photo:PIXTA

大成建設の現場を担当する“要注意”の同社社員について、現場の下請け職人たちは人物情報を口コミで共有している。コロナ感染者が発生した新宿住友ビル改修工事には、「過去最低の現場」と評された都内工事で要注意人物とされる社員がいた。特集『バブル崩壊 ゼネコンwithコロナ』(全7回)の#2では、工事現場の惨状に迫る。(ダイヤモンド編集部 松野友美)

三角ビルのコロナ感染を発表しなかった
大成建設にまつわる“いわく”

 東京・新宿のオフィス街で6月末、新宿住友ビル1階の足元と上空にガラス張りの巨大アトリウムが完成した。その特徴的な形から“三角ビル”の愛称で親しまれるこの超高層ビルは、竣工から今年で46年。老朽化に対応し、新たな価値を付加するリニューアルプロジェクトの目玉となるアトリウムの工事は、大手ゼネコンの大成建設が施工した。

 この工事現場では4月下旬、新型コロナウイルスの感染者が発生していたが、大成はそれを一般に公表しなかった(詳細は本特集#1『大成建設「本社社員コロナ死」隠しの真相、新宿住友ビル工事でも感染者』 参照)。

 7月15日にも都内の別の現場で17人の感染者が発生し、さすがにこのときは一般に発表したが、それまでは建設現場での感染発生をゼネコン各社が相次ぎ発表する中でも、大成は“コロナ隠し”とも受け取られかねないほど公表に消極的だったのである。三角ビルについては施主である住友不動産とも協議した上ではあろうが、大成の建設現場で働いたことがある下請け職人たちは、感染発生を耳にすると「あの会社ならば公表しないのは当然」とささやき合っていた。

 三角ビルの現場では、感染発生により工程が組み替えられ、それに伴って急きょスケジュールに空きが出た職人もいたが、その休業補償は自己申告制。下請けである職人は大成に忖度して、申告しづらい。職人たちに言わせれば、それもまた「当然のこと」。「大成は職人を馬車馬のように扱うから。それに比べれば、同じ東京発祥の大手でも清水建設や鹿島はまだ上品」と辛辣な言葉を吐く者もいる。

 しかも、この大成については、ある“いわく”があった。

 大成の現場を担当する“要注意”の同社社員について、現場の下請け職人たちは人物情報を口コミで共有している。コロナ感染者が発生した三角ビルの改修工事には、「過去最低の現場」と評された都内工事で要注意人物とされる社員が出入りしていたのである。