IT投資の際の「投資対効果」を再考せよ
“虫食い”システムでは乗り切れない

――ただ、全社的にコスト削減を急がなくてはならない状況で、DXのためにIT投資を加速させるのは難しい状況ではないでしょうか。

太田氏 コスト削減とIT投資については、欧米と日本では大きく考え方が違うように感じます。

 多くの欧米企業では「今、IT投資をすることで将来避けられるリスクやコスト」まで考えて、投資判断をします。ROI(Return on Investment、投資対効果)を考えるのは欧米企業も日本企業も同じですが、欧米企業は将来発生するコストを「R(リターン)」として算入するのです。

 ですが、日本は「現在発生しているコストから実質的に削減できること」だけを考える傾向があります。この違いは非常に大きいと思います。

 日本企業のIT投資は将来的にコスト削減ができる機能やシステムを抜いてしまうから“虫食い状態”なものが多いですね。

河野氏 こういう話をすると「現時点で発現していないものをコストとして認識して、それを削減できるからといってIT投資の効果として考えるべきなのか」という議論になりがちなのは確かです。

 ただ、こうしたROIに対する考えがあるため、日本の製造業の製造システムが、設計から製造、完成するまでサプライチェーン全体を一気通貫するシステムになっていないことにつながっています。これが今のDXの遅れの根底にあるわけです。

太田陽介
ビジネス コンサルティング本部 サプライチェーン&オペレーション プラクティス日本統括マネジング・ディレクター/2000年アクセンチュア入社。テクノロジー部門を経て2011年から戦略部門に異動。製造業・ハイテクなど複数産業、また国内外でのサプライチェーン企画・設計を多数歴任。サプライチェーン以外にも生産、調達、R&Dなどのアジェンダを広くカバーする経験を有し、ビジネスモデル変革からそれに応じた機能設計などに詳しい。
 
河野真一郎
ビジネス コンサルティング本部 インダストリーX.0グループ日本統括マネジング・ディレクター/日系広告代理店勤務を経て、1993年アクセンチュア入社。自動車業界を中心に、製造業向けのコンサルティングに長年従事。アジア・パシフィック地域インダストリアルグループ(自動車・産業機械・物流)統括などを経て、2017年から製造業のデジタル変革を推進・支援するデジタルコンサルティング本部 インダストリーX.0統括を務める。 2020年3月、組織変更により現職。書籍『インダストリーX.0 製造業の「デジタル価値」実現戦略』(日経BP社)日本語版の監訳・序文を執筆。