橘玲の世界投資見聞録 2012年9月6日

[橘玲の世界投資見聞録]
失業率が深刻なポルトガルでは
旧宗主国と植民地の関係が逆転していた

ユーロ2012の狂騒と静寂

 私がリスボンに着いた日の夜は、ユーロ2012でグループステージ突破をかけたポルトガルとオランダの大一番が行なわれた。今回の旅行でいちばんの盛り上がりを期待して繁華街に出かけてみたのだが、案に相違して、試合時間が迫ってもカフェやブランドショップが集まるアウグスタ通りは閑散としたままだ。仕方がないのでTVモニタを備えつけたカフェに入ったのだが、三々五々集まってくる観戦者はみんなヨーロッパなどからの観光客だ。それ以外には、近くの店の従業員が5、6人、カフェの外から覗き込んでいるだけだ。

 試合はエース、クリスチアーノ・ロナウドの2得点でポルトガルが勝利を収め、見事にグループステージ突破を決めたが、試合終了のときもぱらぱらと拍手が起きただけだった(カフェの客の3分の1はサッカーに興味がなく、仲間内で談笑していた)。拍子抜けして、ホテルまで歩いて戻ろうとリベルダーデ通りに出たところで、ポルトガル国旗を突き出し、クラクションを鳴らす車列と遭遇した。リスボンの若者たちが、暴走族のいう「箱乗り」で国旗を振りかざしながら、リベルダーデ通りを走り回っていたのだ。

 歓喜の中心はボンバル侯爵広場で、昼間は誰もいなかったのに、若者たちが像によじのぼってポルトガル国旗を振っている。箱乗りの車がクラクションを鳴らしながら周回し、これまでいったいどこにいたんだろう、というお祭り騒ぎだ。

ポルトガル勝利の後、熱狂のボンバル侯爵広場  (Photo:©Alt Invest Com)

 勝利の熱狂をしばらく眺めた後、ホテルに戻ろうと歩きはじめた。ボンバル侯爵広場から公園に向かって通り渡ると、また誰もいなくなった。

 途中に世界的なブランド系ホテルがあるのだが、いまは住居用だけになったらしく、部屋に明かりはついているものの、正面玄関のシャッターを下ろしてまるで廃墟のようだ。無人の街に、クラクションの音だけが遠く聞こえる。


月のない暗い夜空に、ジャカランダの青紫の花がひらひらと舞っていた。
 

 執筆・作家 橘玲

<Profile>
橘 玲(たちばな あきら)
作家。「海外投資を楽しむ会」創設メンバーのひとり。2002年、金融小説『マネーロンダリング』(幻冬舎文庫)でデビュー。「新世紀の資本論」と評された『お金持ちになれる黄金の羽根の拾い方』(幻冬舎)が30万部の大ベストセラーに。著書に『黄金の扉を開ける賢者の海外投資術 究極の資産運用編』『黄金の扉を開ける賢者の海外投資術 至高の銀行・証券編』(以上ダイヤモンド社)などがある。最新刊『(日本人)かっこにっぽんじん』(幻冬舎)が発売中。ザイオンラインとの共同サイト『橘玲の海外投資の歩き方』をオープン。   
 

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橘 玲(Tachibana Akira) 作家。1959年生まれ。早稲田大学卒業。「海外投資を楽しむ会」創設メンバーのひとり。著書に『お金持ちになれる黄金の羽根の拾い方』『(日本人)』(幻冬舎)、『臆病者のための株入門』『亜玖夢博士の経済入門』(文藝春秋)、『黄金の扉を開ける賢者の海外投資術』(ダイヤモンド社)など。
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