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9月4日 18時0分
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ECB理事会を前に〜試されるドラギ総裁の約束〜 - 村上尚己「エコノミックレポート」

・今週6日(木)に予定されている欧州中央銀行(ECB)の理事会に市場の注目が集まっている。5月ギリシャ総選挙で再燃した欧州債務危機が、7月下旬のドラギECB総裁の「ユーロ圏を守るためにあらゆる手段を講じる」との発言をきっかけに、落ち着きつつあるためだ。

・この発言で、スペイン国債金利上昇に歯止めがかかり、同様に為替市場でユーロドルも反転する動きをみせている。ただ、スペイン国債金利(対ドイツ国債との格差)は、5月初旬の水準と比べるとまだ高く、市場の疑念もまだ根強い(グラフ参照)。


7月27日レポートで紹介したが、ドラギ総裁は「スペインなどの高利回り」が問題と言及している。つまり、「あらゆる手段」とは債務不履行懸念で売られている国債金利を低下させる政策である。他の先進国の中央銀行が行っているのと同様、中央銀行であるECBが、市場を通じてスペインなどの国債購入を増やす行動に踏み出せるかどうかである。

・既にドラギ総裁は8月の理事会後に、国債買い取り策の大枠を発表している。まず、ECBが買い取る対象は短中期国債が中心になる。更に、国債買入れを行う条件として、対象国が救済基金に支援を要請し財政再建に取り組むことが挙げられている。先週金曜日(31日)にも、「ECBの国債買い入れに、救済基金による債券購入が条件になる」ことをECBのクーレ理事が言及している。

・一方、救済基金であるESM(欧州安定メカニズム)については、ドイツ憲法裁判所の審議が遅れた影響でまだ稼働していない。憲法裁判所は、今月12日(水)にESMの合憲性の判断を下すとされている。一部で「ESMの合憲性の判断がないと、ECBによる国債買い入れ策を打ち出せない」と報道されている。

・また、先週独地元紙はドイツ連銀バイトマン総裁が、ECBの債券買入れ計画への反対を理由に何度か辞任を検討したと伝えた。8月27日レポートで紹介したが、ECBが2011年夏に証券市場プログラム(SMP)で国債購入を再開しスペインやイタリアの国債買入れを行った際、これに反対するドイツのシュタルク専務理事が辞任。これをきっかけに、ECBの政策対応に市場が疑念を抱き、国債金利上昇に歯止めがかからなかった(グラフ参照)。


・この「ドイツ連銀の抵抗」は、2011年と同様の顛末が起きることを想起させる。こうした保守的なドイツ連銀などの立場を抑える形で、ECBがユーロ経済全体を見据えた経済安定化策に踏み出す決意をみせ、それを裏付ける国債買入策を機能させることで、7月末のドラギ総裁の「約束」は果されることになる。

・さて今週のECB理事会で、ドラギ総裁はこの約束を実現できるか。市場では「来週のドイツにおけるESMの合憲判定まで、国債購入開始時期や買取規模の公表には至らない」との見方が広がっており、この点で市場の期待は過剰には高まっていないと思われる。既に明らかにしている国債買取策について、「実現が困難」などのドラギ総裁の言及がなければ、市場は大きく失望しないのではないか。

・仮にサプライズがあるとすれば、ECBのドラギ総裁が国債買取策について、「強いメッセージ」を打ち出すケースかもしれない。購入策の中身は揃わず、また政治的なハードルが残ることは変らない。それでも、中央銀行の責任で経済安定策を講じる、「一貫性がある姿勢」が打ち出されれば、制限なしに国債購入ができるECBの対応への市場の信認が高まるということだ。

・この場合は、目先的には、ユーロの戻りが続く可能性がある。ただ、ECBによるそうした対応は、「非伝統的な金融緩和策」の強化である。FRBによる追加金融緩和がドル安要因になるのと同じで、ECBが通常行わない政策にまで踏みだす金融緩和はユーロ安要因である。また、米欧の経済状況を比べると、欧州経済の弱さが際立っておりユーロ高が続く環境ではない。一時的にユーロが買い戻されても、それは長続きしないと考えている。




(チーフ・エコノミスト 村上尚己)

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