その結果、DNAメチル化パターンの類似性が高かったのは、若い犬と若いヒト、または高齢の犬と高齢のヒトとの間であり、逆に、若い犬と高齢のヒト、あるいは高齢の犬と若いヒトとの間では、類似性が低かった。また、加齢とともに変化していくメチル化パターンの速度が、犬とヒトで同じではないことも分かった。これは、これまで言われていた1対7というような単純なルールで犬の年齢を人間の年齢に換算できないということを意味する。例えば、犬は生まれてから成熟期(2~7歳)の間の成長が早く、犬の2~6カ月は人間の1~12歳、犬の1歳は人間の30歳、犬の4歳は人間の52歳程度に相当するが、7歳までに老化スピードが鈍化し、犬の12歳は人間の70歳に相当するという。
こうした結果についてIdeker氏は、「犬は生後9カ月で子どもを産むことができるので、1対7という比率が犬とヒトの年齢の正確な尺度ではないことは分かっていた」と述べている。
研究チームは、今回の研究で得られた知見が、獣医にとって便利なツールとなるだけでなく、アンチエイジング治療の効果を評価する際にも役立つ可能性があるとしている。その上でIdeker氏は、「最近、科学的な裏付けの程度がさまざまに異なるアンチエイジング製品が非常に多く出回っている。しかし、使用する製品に本当に効果があるのかどうかを、約40年もの歳月を待たずして知るにはどうすればよいのか。その方法となり得るのが、加齢に伴い生じるメチル化パターンの測定だ。介入前と介入中、介入後のそれぞれでのメチル化パターンの変化を調べることにより、その製品が与える影響を知ることができるのではないか」と説明する。
犬は犬種によって寿命が異なる。しかし、この研究では、一種類の犬種のみを調べた結果から計算式が開発された。研究チームはこの点が今回の研究の限界であり、さらなる調査を行う必要があることを認めながらも、計算式がヒトとマウス、およびラブラドールレトリバーにおいて正確に当てはまったため、全ての犬種に適用されるだろうと予測している。
研究チームは今後、他の犬種を対象に計算式の妥当性を検証し、唾液サンプルでも同様の結果が得られるのかどうかを確認するとともに、マウスを対象に、延命のためのさまざまな介入を行った場合にエピジェネティックマーカーがどう変化するのかを調べる予定であるという。(HealthDay News 2020年7月2日)
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