ファンド大買収#6Photo:TolikoffPhotography/gettyimages

あらゆる市場は需要と供給の両面で決まる。投資ファンドもしかり。コロナ時代に投資ファンドが大買収に乗り出す理由は、データを見れば一目瞭然だ。日立製作所のように「売り上手」になるためにも知っておきたいトレンドを、特集『開戦 ファンド大買収』(全10回)の#6では分かりやすく解説する。(ダイヤモンド編集部副編集長 杉本りうこ)

かつては「ハゲタカ」と
呼ばれたものだが

 日本にバイアウト(買収)型のプライベート・エクイティ(PE)ファンドが登場して、ほぼ四半世紀になる。この四半世紀のバイアウト案件は、大きく3タイプに分類できる。

 一つは、経営破綻した企業を丸ごと買収する「再生型」だ。事例としては米リップルウッド・ホールディングスによる新生銀行(旧日本長期信用銀行)の買収(2000年)が該当する。日本に登場した当初のバイアウトファンドは、日本経済自体が不況期だったためこのタイプが多く、「ハゲタカ」と不名誉な呼び方をされた。実際のところ、投資先企業の資産を短期で処分しさっさと資金回収する本物のハゲタカファンドもあった。

 次のタイプが、中堅中小企業で創業経営者らが株式を譲渡する「事業承継型」だ。代表例は、米カーライル・グループによる三重県の菓子製造業、おやつカンパニーの買収だ。スナック菓子「ベビースターラーメン」で知られる企業で、本来は創業家から後継者を出す予定だったが、海外展開を強化するためにカーライルを呼び込んだ。