渋谷東京一極集中の弊害は長く言われてきたが、コロナ禍でその是正が進めば、日本はどう変わるのか(写真はイメージです) Photo:PIXTA

新型コロナの影響で
5月には東京から人口が流出

 2020年5月の東京都から他道府県への転出者は、転入者を1069人上回り、差し引きで転出超過となった。これは、外国人を含む移動者数の集計を始めた2013年7月以来、初めてのことだ。

 新型コロナウイルス問題で、新規感染者の数が多く、また緊急事態宣言の解除の時期も他道府県と比べて遅れた結果、東京への転入が大きく減少したことが背景にある。東京の大学に新たに入学した大学生が、東京都への移転をひとまず見合わせた影響なども、大きかったとみられる。

 今後、東京都への転入超過傾向が戻ってくる可能性は考えられる。しかし、感染への強い警戒などは長く続く可能性が高いことから、新型コロナウイルス問題が東京への人口流入に歯止めをかけ、東京一極集中の傾向を徐々に変えていくきっかけとなる可能性はあるのではないか。

東京一極集中が地方を
疲弊させていないか

 2016年時点で東京都の人口は1362万人、日本全体の10.7%と約1割を占める。多方、名目GDPに占める東京都の比率は19.0%と約2割である。つまり、東京都で1人当たりが生み出す付加価値は、国全体の平均のおよそ2倍である。この点から、東京都は非常に経済効率が高い地域であると言える。

 それは、労働生産性の高い業種が東京に集中している、という産業構造の特徴によるところも大きい。また、大手企業の本社・本店が東京に集中していることで、企業のビジネス活動の効率性が高められている面もあるだろう。東京に様々な資源が集中することで、日本経済全体の生産性上昇やイノベーションの促進に貢献してきたという面があることは確かだろう。

 ただし、集中が行き過ぎたことのマイナス面の方がより大きくなっているかもしれない。集積が固定化すると、イノベーションを生み出す力が落ちてしまう可能性もあるのではないか。