発達障害のひとつであるADHD(注意欠陥・多動症)の当事者である借金玉さん。早稲田大学卒業後、大手金融機関に勤務するものの仕事がまったくできずに退職。その後、“一発逆転”を狙って起業するも失敗して多額の借金を抱え、1ヵ月家から出られない「うつの底」に沈んだ経験をもっています。
近著『発達障害サバイバルガイド──「あたりまえ」がやれない僕らがどうにか生きていくコツ47』では、借金玉さんが幾多の失敗から手に入れた「食っていくための生活術」が紹介されています。
働かなくても生活することはできますが、生活せずに働くことはできません。仕事第一の人にとって見逃されがちですが、生活術は、仕事をするうえでのとても重要な「土台」なのです。
この連載では、本書から特別に抜粋し「在宅ワーク」「休息法」「お金の使い方」「食事」「うつとの向き合い方」まで「ラクになった!」「自分の悩みが解像度高く言語化された!」と話題のライフハックと、その背景にある思想に迫ります(イラスト:伊藤ハムスター)。
★関連記事:発達障害の僕が発見した「向いている職種」「破滅する職種」の見分け方

発達障害の僕が発見した「スマホが手から離れない夜」を強制終了する睡眠法

睡眠薬でも眠れない「うつ集中」

 「不眠は命にかかわる疾病になり得るので、不安を感じたらまずは病院で適切な薬の処方を受けよう」。これが、僕の基本的な考え方です。僕自身、睡眠薬がなければ生活が維持できない程度には、睡眠に問題を抱えています。

 しかし、睡眠薬を飲んでも眠れない、そんな夜もあります。別に楽しくもない、今こんなニュースを見る必要なんかないことはわかっている、むしろ焦燥感に駆られているのに次々とスマートフォンをタップしてムダな情報を頭に入れてしまう。その間にも眠気はあなたから離れていってしまう─これは、いわゆる抑うつ状態の入り口に起きやすいものだと思います。「寝たら明日が来てしまう」恐怖から目をそらすために、スマホに集中してしまうのです。

 うつ状態のもたらす強烈な─それでいて何の役にも立たず人生に負担をかける─集中力。僕は「明日は仕事なんだ、もうやめさせてくれ」と泣きながら「巨大オセロ」をプレイし続けたことがあります。単に超巨大なオセロをやるだけのフリーゲームなのですが、これが1回始めたら抜け出せないんだ……。

寝転びスマホを強制終了する「三種の神器」

 スマホはおそろしく便利で、もはや手放すことなどあり得ない文明の利器ですが、「手から離れなくなってしまう」という恐ろしい機能を搭載しています。楽しくもない寝ころびスマホで、気づいたら時間は明け方だった。こういう状態はとにかく回避するべきです。

 そこで、僕は自分を「強制終了」する方法を編み出しました。用意するのは
・ホットアイマスクあるいはアイマッサージャー
・心地よい音楽の流れるイヤホン
・お好みのお香
です。そしてあたたかい布団にくるまりましょう。

 このハックの最大のポイントは、あなたの五感をすべて心地よさで遮断することです。目には温熱の暖かさが、耳からは音楽の調べが、お香は嗅覚をやさしくくすぐってくれます。何より、視界は完全に覆われているのでスマホに手を出しようがありません。やめたいのにやめられない。そういう状況に陥ったときは、ぜひ試してみてください。

 なお、寝るとき以外にもスマホやパソコンから離れるときは、「強制終了だ!」と声を出すと、さらに効果的です。

★関連記事:発達障害の僕が発見した「向いている職種」「破滅する職種」の見分け方