化粧品業界の盟主である資生堂に異変が起こっている。2005年度を境に国内化粧品の売上高減少が続いており、12年度第1四半期はついに営業赤字に転落した。ネットを活用した新ビジネスモデルは4月に満を持してスタートしたものの、順風満帆とはいえない。コスト構造、事業構造の見直しはスピード感に乏しく、前途は多難だ。(「週刊ダイヤモンド」編集部 野口達也)

「資生堂は化粧品専門店の顧客を奪い取ろうとしている」

 ある化粧品専門店の社長は怒りを爆発させた。怒りの矛先は資生堂が4月に始めたネット活用の総合美容サービスサイト「ワタシプラス」だ。

 サイトはネット販売、ウェブカウンセリング、店舗紹介・検索機能を備え、末川久幸・資生堂社長は「国内化粧品事業の変革を図るもの」と期待。特に化粧品専門店の活性化につなげようとしている。

 トラブルは開始後まもなく発生した。資生堂は新しいポイント制度としてネット用の「ワタシプラス会員」を発足させ、化粧品専門店の各店舗が抱える従来の会員を新制度に移行するよう依頼した。多くの化粧品専門店はその依頼に従ったのだが、その後の資生堂の行動に驚かされることになった。

【企業特集】資生堂<br />新規ネット事業で店舗は混乱<br />国内化粧品回復へコスト減が急務一部の化粧品専門店を激怒させた資生堂の会員向けメール
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 「オンラインショップで、今すぐお買い物してみませんか」

 資生堂はなんと、登録した会員に対してこんな内容のメールを配信したのだ。化粧品専門店からすれば、長年築いてきた顧客を資生堂が奪おうとする行為に見えた。

 反発した化粧品専門店の業界団体である全国化粧品小売協同組合連合会は、組合員に対して新制度への移行を中止するよう指示することさえ検討した。

 資生堂は当然、メールの記述を見直したが、問題はまだ残っている。たまったポイントはネット通販では使えるが、店舗では利用できないのである。そのため、一部の化粧品専門店はいまだに新ポイント制度の導入に反対している。