ワークマン独り勝ちの裏に潜む、競合がマネできない「戦略ストーリー」とはPhoto:Diamond

表層の「業績や商品」ではなく
深層にある「戦略」に注目すべき理由

 企業や事業を見るとき、世の人々は表層にある「業績」や「商品」に注目する。しかし、深層にある「理由」にまで目を向ける人は少ない。競争がある中でなぜ儲かるのか。その理由は戦略にある。業績や商品にとどまらず、その背後にある戦略を理解したほうが有用だし、知的刺激という点でもよほど面白いと思う。何かにつけて忙しく、連日メディアから大量の情報があふれ出てくる今日この頃である。表層や断片をチラ見するだけで終わってしまうのも分からないでもない。それにしても、もったいない話だ。

 著者が所属する一橋ビジネススクール国際企業戦略専攻(ICS)は2001年から「ポーター賞」を運営している。企業を表彰する賞は数多いが、そのほとんどは何らかの「結果」を評価対象としている。ポーター賞のユニークなところは、結果(ポーター賞の場合は「収益性」)において優れていることはもちろんだが、結果の背後にある理由――優れた戦略――を直接的な評価対象としていることにある。

 2019年度のポーター賞受賞企業のひとつに、ワークマンがある。同社は高収益企業として注目を集めている。成熟した国内アパレル市場を主戦場としているにもかかわらず、ここ5年間の平均ROIC(投下資本収益率)で12.6パーセンテージポイント、平均ROS(営業利益率)で14.5パーセンテージポイント、それぞれ業界平均を大きく上回るパフォーマンスを出している。