ウィーチャット使用禁止になる微信(ウィーチャット)。ユーザーには困惑が広がっている Photo:NurPhoto/gettyimages

米中のつばぜり合いは激化の一途をたどっており、米国はついに中国系住民と大陸市民をつなぐSNSである「微信(ウィーチャット)」の使用禁止も打ち出した。両国のユーザーの間では困惑が広がっているが、本当の狙いは米企業の中国での活動にあるともいわれている。(ジャーナリスト 姫田小夏)

ウィーチャット禁止の効果は微妙?

 トランプ米大統領は8月6日、動画アプリ「TikTok(ティックトック)」を運営するバイトダンスとの取引を、9月下旬から禁止する大統領令に署名した。同時に、SNS「微信(ウィーチャット)」の運営会社のテンセントに対しても、同じ措置を講じた。

 大統領令によれば、ウィーチャットが行う膨大な情報収集に対し、中国共産党が米国人の個人情報や専有情報にアクセスする恐れがあり、また米国在住の中国系市民を監視するものだとして、米国管轄下にある個人または法人によるウィーチャットに関わるどのような取引も禁止する、としている。

 ウィーチャットは、LINE(ライン)のようなチャット機能と、FB(フェイスブック)のような発信機能や通話機能を備え、また振り込みや送金、支払い決済機能も持つことから、中国人には欠かせない重要な生活インフラとなっている。中国信通院(CAICT)の資料によれば、ウィーチャットの月間アクティブユーザーは12億人、20の言語で200を超える国と地域で利用されているという。

 米国には人口の1.3%にあたる439万5912人(米国勢調査局)の中国系住民が生活しており、彼らにとってウィーチャットは主要な交流プラットフォームの一つである。だが、米国全体で見たウィーチャットの月間アクティブユーザーはわずか148万人(Statista、2019年9月)にとどまり、FBの1億人に比べて微々たる数にすぎない。そのため、中国系市民の間では「米国がウィーチャットを標的にしても、たいした成果にはならないのではないか」とする声もある。