橘玲の世界投資見聞録 2012年9月12日

[橘玲の世界投資見聞録]
エーゲ海の豊かな島・クレタ島で
ギリシアという「国」について考える

ギリシアの失業率は23%

 ギリシアの最大の問題は、じつは財政危機ではない。

 太陽を求めてギリシアを訪れる北ヨーロッパからの観光客は、クレタをはじめとして、ミコノス島やサントリーニ島、ロドス島などのエーゲ海の島々でひと夏を過ごす。それ以外の島はギリシア人のバカンス客が激減して売上げが大きく落ち込んでいるというが、それでも観光資源すらない内陸部よりははるかにマシだ。

イラクリオンに次ぐくれた第二の都市ハニア。港沿いにはカフェが並ぶ (Photo:©Alt Invest Com)

 ギリシアの首都アテネにはアクロポリスの神殿と国立博物館くらいしか見所はなく、観光客は素通りして、船や飛行機でエーゲ海の島に行ってしまう。観光資源がないのに人口ばかり多いから、財政の悪化で公務員の削減や給与カットが行なわれると中産階級が貧困層に転落して、ボランティアの配給で生きていくしかなくなる。アテネですら暮らしていけないのなら、他の地方都市の惨状は想像するまでもない。ギリシアの失業率は23%を超えているのだ(2012年5月)。

 ヨーロッパの人口統計では、ドイツは出生率が下がっているにもかかわらず人口が増え、大家族の伝統のあるスペインやギリシアで人口減が続いている。いまではドイツのどんな町にもトルコ料理と並んでギリシア料理の店があるように、仕事を求めて南欧からドイツやオランダ、ベルギー、北欧諸国などを目指す大規模な移民が始まっている。

 人口の移動は、ヨーロッパ内だけではない。

 昨年10月にオーストラリア政府が、アテネで技術系移民のための説明会を実施したところ、定員800名に対して1万7000名の応募があった。オーストラリアは移民国家なので、家族の誰かが市民権を取得すれば自分の親族を呼び寄せることができる。こうしていつのまにかギリシア人のコミュニティができあがり、メルボルンのギリシア系市民は15万人を超えるという。

 アテネの人口は75万人、第二の都市テッサロニキは32万人で、いまや“ギリシア第三の都市”はメルボルンだ。日本では産業の空洞化が問題になっているが、国家の財政が破綻すれば国民が空洞化してしまうのだ。

 クレタのカフェで二杯目のビールを飲みながら、「ギリシアがユーロから離脱するなら、クレタはギリシアから独立する」というオーナーの言葉を思い返した。

 クレタは、そのゆたかな観光資源で、ギリシアという「沈みゆく国家」なしでもやっていけるだろう。国家が破綻するとき、「国」に所属していることにいったいどんな意味があるのだろうか。

ミノス王のクノッソス宮殿跡  (Photo:©Alt Invest Com)

 

 (執筆・作家 橘玲)

<Profile>
橘 玲(たちばな あきら)
作家。「海外投資を楽しむ会」創設メンバーのひとり。2002年、金融小説『マネーロンダリング』(幻冬舎文庫)でデビュー。「新世紀の資本論」と評された『お金持ちになれる黄金の羽根の拾い方』(幻冬舎)が30万部の大ベストセラーに。著書に『黄金の扉を開ける賢者の海外投資術 究極の資産運用編』『黄金の扉を開ける賢者の海外投資術 至高の銀行・証券編』(以上ダイヤモンド社)などがある。最新刊『(日本人)かっこにっぽんじん』(幻冬舎)が発売中。ザイオンラインとの共同サイト『橘玲の海外投資の歩き方』をオープン。   
 

 

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橘 玲(Tachibana Akira) 作家。1959年生まれ。早稲田大学卒業。「海外投資を楽しむ会」創設メンバーのひとり。著書に『お金持ちになれる黄金の羽根の拾い方』『(日本人)』(幻冬舎)、『臆病者のための株入門』『亜玖夢博士の経済入門』(文藝春秋)、『黄金の扉を開ける賢者の海外投資術』(ダイヤモンド社)など。
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