元受刑者元受刑者の前田省吾氏。現在は社員20名ほどの建設会社の社長として懸命に働く日々を送っている

人はなぜ犯罪に走るのか。その多くは「カネ」に起因する。日々の資金繰りに窮した末に、あるいはできるだけ楽に大金を稼ぎたいという欲から、盗み、だまし、売り、時には殺すのである。人間誰しも「犯罪者」に堕ちる可能性を秘めている。そして当然のことだが、不況のときほどカネ絡みの犯罪は増える。コロナ禍でGDPの落ち込みが戦後最大となった日本で、今後そうした犯罪が急増していくのは確実だろう。しかし、逮捕され、有罪が確定したらどうなるのか。市井に生きる普通の人間にはなかなかうかがい知れぬものがある。かつて広域窃盗団の「情報屋」として働き、懲役7年の刑に服した元受刑者が、犯罪に手を染めた経緯、犯行時の状況や心理状態、そして刑務所暮らしのヤバ過ぎる実態を告白する。(ライター 根本直樹)

資金繰り難から
悪魔の誘いに

 猛暑で知られる北関東某市在住の前田省吾(仮名・48歳)は現在、社員20名ほどの建設会社の社長として懸命に働く日々を送っているが、ほんの3年前までは塀の中で暮らしていた。

 前田はかつて、全国で空き巣や緊縛強盗を繰り返していた窃盗団に、資産家の自宅やセキュリティーの緩い会社、店舗などの情報を流して報酬を得る「情報屋」だった。しかし今からおよそ11年前に窃盗団の主要メンバーが逮捕されると、芋づる式に御用となったのである。