先週末(11月27日)、東京市場は大混乱に陥った。株式市場では日経平均株価が300円を超える大幅な続落となったほか、外国為替市場でも円相場が一時1ドル=84円台と14年4ヵ月ぶりの高値を記録したのだ。

 背景にあったのは、アラブ首長国連邦(UAE)のひとつ、ドバイ首長国が100%出資する政府系企業「ドバイワールド」の信用不安をきっかけにした、世界的な金融不安への懸念だった。

 一連の世界的な混乱は、かねて懸念されていた通り、欧州の金融機関が、米国勢に比べて、不良債権処理で大きく遅れていることを裏付けたとみられている。世界経済が二番底に向かっていることに対する警鐘だというのである。

 「いったい何があったのか、まだ現地の状況がロクに把握できていません。

 なにしろ、ドバイ首長国は、市場がこれから(連続4日間の)長期休暇に入るというタイミングで、『(ドバイワールドとその傘下の不動産開発企業ナキールの債務返済を)少なくとも2010年5月30日まで猶予するよう求める』と記したメモを債権者にFAXして、そのまま質問も受け付けず、休暇に入ってしまったのです」。

 あるメガバンクの広報担当者は27日午前、筆者にドバイ危機の状況をこう説明した。どうやら、ドバイ首長国の担当者は、今回の債務の返済繰り延べ要請は悪いニュースなので、長期休暇前に発表しておき、長期休暇を挟むことで市場が自律的に平静を取り戻すことを期待したらしい。

 しかし、この戦略はひとりよがりで、完全に裏目に出た。結果として、大変な混乱を引き起こしたのだ。欧州に始まり、米国、アジアと世界の市場が、ドバイショックに振り回されたのである。

 そして、現地時間の先月30日、ようやくラマダン開けの休暇が終わり、ドバイワールドは銀行団との債務繰り延べ交渉の状況を詳しく発表した。それによると、繰り延べ要求の対象になっている債務の総額は260億ドル(約2兆2000億円)だ。この中には、ヤシの木のデザインの人工島の建設などで知られている傘下の不動産開発会社ナキールの債務が含まれているという。