仕事ができる人が必ずしもリーダーにふさわしいわけではない理由写真はイメージです Photo:PIXTA

どの組織でも、誰をリーダーに選ぶか頭を悩ますものである。仕事ができる人物が必ずしもリーダーにふさわしい行動を取れるとは限らないからだ。そうかといって、リーダー候補が複数いるとして、仕事能力で明らかに劣る人物の方をリーダーに指名しても、仕事ができる方の人物のモチベーションが下がれば組織として大きな損失だし、不満が出てきてややこしいことにもなりかねない。望ましいのは仕事能力で優る人物にリーダーにふさわしい行動を身につけてもらうことである。今回は、リーダーとして力を発揮している人たちが身につけている心理機能について見ていきたい。(心理学博士 MP人間科学研究所代表 榎本博明)

リーダーに求められる2つの心理機能

  どんな人物がリーダーになるかによって組織のパフォーマンスには大きな差が出てくる。ゆえに、誰をリーダーにすべきかは、どの組織にとっても重大な関心事となる。時にその選択が組織の生死を分けることにもなりかねない。

 そこで、心理学においても、リーダーシップについてさまざまな研究が行われてきた。多くの心理学的研究が積み重ねられる中で浮上してきたのが、リーダーシップには主に2つの心理機能が求められるということである。

 リーダーに求められる2つの心理機能とは、課題遂行を志向する機能と人間関係を志向する機能である。言い換えると、集団としての目標達成に向けてみんなを引っ張っていく機能と、集団のメンバーの気持ちや関係性に配慮して集団をまとめていく機能である。

 この2つの心理機能に着目した研究の中でも代表的なのが、心理学者の三隅二不二が提唱したPM理論である。

 PM理論のPはパフォーマンスの頭文字を取ったもので、組織集団における目標達成や課題解決を促すリーダーの機能を指すことから、目標達成機能という。
 
一方、Mはメンテナンスの頭文字を取ったもので、組織集団の維持やまとまりを促すリーダーの機能を指すことから、集団維持機能という。

 では、目標達成機能にしても集団維持機能にしても、実際どのようなものであり、それぞれ具体的にどのような行動としてあらわれるのだろうか。これからリーダーを育てたいという人、あるいは自分自身がリーダーを目指しているという人のために、各要素を、私が具体的な行動として示したものをまとめたので、それを参考にしていただきたい。