没落貴族#5Photo by Nanako Ito、AFLO

コロナ禍で数少ない“勝ち組”アパレルに名を連ねるしまむら。春夏の在庫はほぼ完売するほど好調で、10月には自社ECのサイトを本格的に立ち上げ、店舗とECの融合を推し進める。特集『没落貴族 アパレル・百貨店』(全9回)の#5では、DXの旗振り役で、2月にトップに就任した鈴木誠社長に好調の秘訣を明かしてもらった。(ダイヤモンド編集部 相馬留美)

都心部閉店のおかげで
地元の店に客が帰ってきた

しまむらの鈴木誠社長しまむらの鈴木誠社長 Photo by N.I.

――しまむらの既存店の月次売上高は、新型コロナウイルスの感染拡大で前年同月比70%台まで落ち込んだものの、6月は127.0%、7月は109.1%と大幅に取り戻しました。

 緊急事態宣言のあった4月後半は客数が半分になり、最も売り上げが落ち込みました。しかし、ゴールデンウイークの後半あたりから少し様子が変わってきました。

 緊急事態宣言が解除されず、延長が決まった頃に、「もう我慢できないから買い物に行かなくちゃ」と消費者の方々が考えたのか、そのあたりから売り上げが回復してきたのです。(編集部注:政府は5月4日に緊急事態宣言を31日まで延長することを発表)

――来店したのはリピーター客ですか。

 そうとは限りませんでした。私たちは衣料品のインフラであり、地域社会に貢献することを意識し、可能な限り店の営業は継続したいと考えてきました。その結果、全体の3%に当たる商業施設内の店は休業したものの、その他の店は営業時間を短縮して営業を続けました。

 来店したのはどんなお客さまだったのかをSNSなどで聞いたところ、初めての来店客の他にも、「久しぶりに来た」という声をとても多く頂いた。5月、6月は客数が非常に増えました。

――都心部のアパレルの店舗は閉まっていましたからね。8月の売上高が前年同月比95.5%に落ちた理由は?

 8月に売れる場合は、6月と7月の販売に失敗したときです。昨年は梅雨明けが遅かったので、売り上げが高かった。実数で見ると今年の8月の売り上げは、社内計画を上回っています。

 逆に、早く夏物がなくなってしまったので、秋冬物を前倒しで展開しています。