ルーブルと原油ロシア経済には構造的な特徴があり、コロナ禍においても絶妙なバランスの上で命脈を保っている。Photo:PIXTA

景気は最悪期を脱するも
雇用はリーマンショック以上に悪化

 新型コロナウイルスの世界的な感染拡大(パンデミック)を受けて、各国のGDP(国内総生産)は軒並み大幅減を余儀なくされているが、ロシアもまた最新4-6月期のGDPが前年比8.5%減と厳しい内容になった。厳格な都市封鎖(ロックダウン)が採用された結果、特に小売などの非製造業の落ち込みが大きくなった。

 とはいえ、ロシアでは6月9日に首都モスクワでロックダウンが解除されるなど、諸外国と同様に経済活動の再開が徐々に進んでいる。景気指標に関しても7月の製造業生産が前年比3.4%減と、マイナス幅は最悪期であった4月の9.9%減から縮小するなど、いくつかの月次統計からは持ち直しの動きが確認できる。

 反面、雇用は厳しく、2019年末の4.6%であったロシアの失業率は最新7月時点で6.3%と、上昇に歯止めがかからない。70万人程度に過ぎなかった失業保険の登録者数も、この間に331.1万人まで急増した。2008年秋のリーマンショック後の最悪期でも200万人台前半であったことから、今回の雇用悪化の深刻さがうかがえる。

 なお、ロシアの新型コロナウイルスの感染状況を確認すると、感染者の増加は徐々にそのテンポは落ちているもののまだ続いており、8月に入っても日当たり5000人弱の感染者数を記録している。累計の感染者数は95万人を超え世界4位(しかし3位のインドは300万人を超えている)の多さだが、死者数は1万6000人程度と抑制されている。

新興国の中でも堅実な
ロシア中銀の政策スタンス

 グローバルなコロナ禍で、新興国の通貨は対ドルで軒並み下落しているが、ロシアの通貨ルーブルも15%を超える年初来下落率となっている。投資家のリスクセンチメントが悪化したこと、最大の輸出品目である原油の価格が下落したこと、ロシア中銀が景気を下支えするために利下げを進めたことなどが、ルーブル安の主な理由だ。