アップルの成長は永遠なのか──。スティーブ・ジョブズ氏の死から約1年、その試金石となる商品が登場した。

「今日は最高にクールなものを、いくつかお見せしましょう」

 9月12日午後アップルのティム・クック最高経営責任者(CEO)らは米国サンフランシスコで、世界的ヒットを記録しているスマートフォンの最新作「iPhone5」を披露した。

 アップルがまず強調したのは、筐体がより薄く、より軽く、より美しくなったこと。アルミとガラスの素材で作った本体は、厚さ7.6ミリメートル(前作比18%減)、重さ112グラム(同20%減)となり、手に取るととても軽い。

 液晶ディスプレイも縦長の4インチと大きくした。高速通信規格のLTE(ロング・ターム・エボリューション)に対応させて、接続スピードを速くしたことも挑戦だったとアピールした。

 一方、ソフトウエアには最新のiOS6を採用した。

 アップルが独自開発した新しい地図アプリは3D表示ができ、音声で道案内もしてくれる。映画や航空券のeチケットを格納できる「パスブック」も便利だ。

 国内ではソフトバンクとKDDIが21日から発売を始める。

 ところが高い期待にもかかわらず、アップルには安穏としていられない現実がある。

 iPhoneはアップルの飛躍的な成長を支える“エンジン”そのものだった。

 初号機が発売された2007年こそ約370万台だったが、倍々ゲームで売り上げを伸ばし、直近の1年間(11年7月~12年6月)では1億1520万台に。その間に全社の売上高は5倍近くに膨らみ、時価総額は6235億ドル(約49兆5000億円)と世界1位を記録した。実際に昨年度のアップルの売上高の半分近く、利益の6割超をiPhoneが占める。