地方エリートの没落 地銀・地方紙・百貨店#12Photo:©Michiaki Omori/a.collectionRF/amanaimages

江戸時代に開業するなど、由緒ある地場百貨店は今なお創業家が君臨していることも多い。ただ、過去には独断専行で経営難の原因となってしまったオーナーが追放されたケースもある。神奈川県のさいか屋は、今まさにオーナーが経営権を奪われつつある状態にある。特集『地方エリートの没落 地銀・地方紙・百貨店』(全13回)の#12では、苦境に立たされる地場百貨店の行方を追う。(ダイヤモンド編集部 岡田 悟、山本興陽)

閉店したさくら野百貨店を尻目に
代々地位を守り続けてきた仙台の名門、藤崎

「地方エリート」の中でも特に格式高い存在だったのが、地場百貨店の創業家だ。地方都市の中心市街地の“顔役”であり、地元財界の一角を占めるなど存在感を放ってきた地場百貨店。多くは江戸時代に呉服店として創業するなど歴史があり、創業一族は間違いなく地元を代表する名家だ。

 しかし、時の流れは残酷だ。地場百貨店が光り輝いた時代はとうに過ぎ去り、かつてない苦境に陥っているのは本特集#10『全国31地場百貨店「売上高減少」ランキング、11社は2期連続赤字にも』や#11『JR九州が地元名門百貨店とデスマッチ!「走る総合不動産」の猛威』で見てきた通りだ。

 その厳しい現実によって、地場百貨店の創業家の栄枯盛衰ドラマが進行している。まずは宮城県仙台市で繰り広げられている名門百貨店の創業家を巡るドラマをのぞいてみよう。

 JR仙台駅の北西には3年以上、百貨店の建物が閉鎖されたまま残されている。さくら野百貨店の仙台店が2017年2月に閉店して以来、そんな状況なのだ。街の中心部に廃虚が残された状態が続くことは地元で懸念されてきたが、土地の権利関係が複雑なため、開発計画が進まなかったのだ。

 今年3月に入ってようやく、ドン・キホーテを運営するパン・パシフィック・インターナショナルホールディングスが主導して開発する計画が浮上。商業施設やホテル、オフィスを備えた複合施設となる予定だ。

 仙台駅前で力尽きたさくら野百貨店に対し、仙台市で代々その地位を守り続けてきたのが、名門百貨店の藤崎である。

 ご多分に漏れず仙台でも、仙台駅の“エキナカ”とその周辺の商業施設に若い買い物客が集まるようになった。しかし、仙台駅と藤崎本館がある青葉区一番町との距離が近いこともあり、本館周辺の人通りは多い。

 そんな藤崎が長年温めてきた計画が、本館の建て替えだ。営業を止めるわけにはいかないので、他の地権者と共に東隣の複数のビルを建て替え、新しい本館を建設するという壮大な計画だ。詳細な内容はこれから策定するが、オフィスなどを備えた複合施設になるとみられる。