株式レポート
9月14日 18時0分
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強力な金融緩和に踏み出したFRB〜2010年の再来か〜 - 村上尚己「エコノミックレポート」

・昨晩(9月13日)の米国株市場は200ドルを超える大幅高となった。FOMCで追加金融緩和策が発表された後、米国株は上昇し始めた(グラフ参照)。QE3は見送られるとの見方が一部で残っていたこともあるが、MBS(住宅ローン関連証券)を対象に毎月400億ドル購入が続く(オープンエンド方式)という強力な金融緩和策が決定されたためである。(1)MBSを買取資産にして住宅ローン・社債金利を幅広く低下させる、(2)資産購入額が今後増え続ける(雇用が十分回復するまで)、この2点でQE2など従来の量的緩和策より強力である。


・これまでの量的緩和政策はあらかじめ購入する資産の規模が決められていた。新たな政策は、経済・労働市場が十分回復するまで、金融緩和を続けるという「約束」を伴っている。労働市場復調を最重視し、それが実現するまで今後も金融緩和の手を緩めないというFRBのメッセージが市場や人々の「期待」を左右する点で、今回の新たな政策が持つ意味は大きい。

・興味深いのは、FOMC声明文をうけた債券市場の動きである。声明文発表直後、10年国債金利は、FRBの購入対象に米国債が入らなかったことで売られた(金利は上昇した)。結局、FOMCの発表直前の水準まで10年金利は戻ったが、FRBの金融緩和策は国債金利の低下をもたらさなかった(グラフ参照)。


・この米債券市場をどうみれば良いのだろうか。本来ならFOMCによる金融緩和の強化は、金利低下要因だが、そのように債券市場は反応しなかった。一つの解釈として、今回のFRBの強力な金融緩和の効果で、今後、米経済が早期に持ち直すシナリオを想定し始めたことが挙げられる。

・2010年11月にQE2が実施された後に、米国では株高に後追いする格好で、長期金利が上昇した(グラフ参照)。今回FRBがQE2よりも強力な金融緩和に踏み出し、2010年後半と似たシナリオが、債券市場でも想定され始めたかもしれないということである。


・もちろん、2010年よりも現在の世界経済の状況は厳しいし、米国においても「財政の崖」のリスクがある。ただ、9月12日レポートで紹介したが、夏場まで低下していた銅などの産業用金属価格が上昇、そして中国での鉄鉱石価格が下げ止まるなど、新興国を含め世界経済を取り巻く環境にも変化の兆しがみられている。

・こうした中で、先週のECBによる無制限の国債購入策に続いて、米FRBが景気刺激を確実にするために、2010年より強力に金融緩和のアクセルを踏んだ。それが、将来の景気持ち直しと、そして安全資産である国債からの資金逃避をもたらすということである。

8月21日レポートで、米国債など安全資産が買われ過ぎていた「異常な価格形成」が終わった可能性を指摘した。このレポートで、2012年の春先同様に世界経済が復調するには時間がかかると述べたが、それに必要な時間は案外短く済む可能性がでてきた。そうであれば安全資産である米国債への売りは続くことになるが、昨日の米国の債券市場の反応はそれを先取りしているのではないか。

・なお、昨日(9月13日)レポートでは、QE3がサプライズになる場合として、MBSを対象としたオープンエンド方式の資産購入を挙げた。そして、ハト派メンバーを中心とした提案が受け入れられ、金融緩和は強化された。ただ実際には、米国金利が低下せず、ドル円相場はFOMCの発表後はドル高となり、円高が進むサプライズとはならなかった。

・まだ1日だけで分からないが、予想は外れたかもしれない。筆者の想定などよりFRBの新たな政策が強力で、それが故に、先に述べたように米債券市場の値動きが、将来の米経済回復・インフレ率上昇を反映しているなら、これは嬉しい誤算である。




(チーフ・エコノミスト 村上尚己)

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