鳩山政権が発足して1ヵ月、鳩山由紀夫首相の地球温暖化対策でのCO2の90年比25%削減の表明、米中露韓との首脳会談、岡田克也外相のアフガン電撃訪問など積極的な外交を展開している。反面、米軍普天間基地の移設問題やインド洋での海上自衛隊の給油活動延長問題では鳩山首相や閣僚の発言が二転三転し、意思決定が遅延していることが批判されている。今回は、良くも悪くも注目が集まる「鳩山外交」を検証する。

 民主党は野党時代に、自公連立政権の安全保障・外交政策の不透明さを追及してきた。自公連立政権時代、日米両政府は普天間基地を2014年までにキャンプ・シュワブ沿岸部(同県名護市)に移設することで合意したが、沖縄県などは代替施設を計画より沖合に移動することを求めてきた。

 政府と沖縄県などの話し合いは進展していない。普天間基地の国外または県外移設を米側に求める民主・社民・国民新の三党合意は、自公政権が汲み取れなかった地元の声に対応したものだった。

 インド洋での自衛隊給油活動は、自公連立政権から「諸外国が団結して行っている海上阻止活動の不可欠な基盤となっており、国際社会から高い評価を受けている」と説明されてきた。しかし、2007年9月の国連安保理での「アフガニスタンにおける国連治安支援部隊による治安維持活動の延長を認める決議」の採択時、ロシアがインド洋での海上阻止活動が決議に盛り込まれたことを理由に棄権するなど、自公連立政権の説明には疑問符が付いている。

 また、この活動はアフガニスタンの海上阻止行動に従事する艦艇への支援と説明されてきたが、事実上イラク向け作戦の艦船への補給活動にもなっていたことを、野党時代の民主党が厳しく追及してきた。

 鳩山政権を批判する前に、鳩山政権が現在取り組んでいることは、これらの野党時代の自公政権追及の延長線上にあるということに留意すべきだろう。

 鳩山政権は、野党時代には接することができなかった機密情報に目を通し、沖縄県や米国、アフガンなど関係者の声を改めて聞き、問題点を整理する作業をしている。その結果はおそらく「現実的」なところに落ち着くだろう(第29回)。しかし、結論が自公連立政権時代と同じでも、それに至るプロセスが全く異なることは軽視すべきではない。

国民が諸外国の情報を知る
機会が増えている

 普天間基地移設問題やインド洋での自衛隊給油活動延長のために、ゲーツ国防長官がわざわざ来日してきた。また、長島昭久防衛政務官の訪米の際、米側は格上のジョーンズ大統領補佐官(国家安全保障担当)や米軍制服組トップのマレン統合参謀本部議長が対応する「大臣なみの厚遇」を受けた。更に、鳩山首相・岡田外相が国連総会などで訪米した際には、それぞれ英国のブラウン首相・ミリバンド外相と会談。日本側のアフガン支援は民生支援でという説明に、英側は給油活動延長を強く求めた。