アベノミクスPhoto:PIXTA

「アベノミクス」による景気拡大期が戦後最長を更新できずに、2番目の長さに終わった。実は、そこに至るまでの水面下では、景気判断を担う学識者らと内閣府の間で“暗闘”があった。特集『アベノミクス 継承に値するのか』の#1では、「安倍政権は都合のいいように景気判断をつくった」と学識者が憤慨する、アベノミクスの「不都合な真実」を記す。(ダイヤモンド編集部特任編集委員 西井泰之)

「戦後最長景気」の更新に
こだわり続けた官邸

 今年7月、強い日差しが照り付ける中、景気動向指数研究会の委員を“行脚”する内閣府幹部の姿があった。

「データがそろいましたのでそろそろ景気の山を判定していただく時期かと。ついてはご相談が――」

 景気の「山」「谷」を示す「基準日」は、景気動向指数の中で、「ヒストリカルDI(ディフュージョンインデックス)」と呼ばれる鉱工業生産指数など10系列の指標の動きを基に、内閣府から委託された学識者らによる研究会が判断してきた。

「ご相談」の内容は、「アベノミクス景気」が新型コロナウイルスの感染拡大が起きる直前の今年初めまで続いていたことにできないか、というものだった。委員の何人かは「背後に官邸や西村(康稔)大臣(経済再生担当相)の意向を感じた」という。

 関係者によると内情はこういうことのようだ。