終電間際のJR新宿駅ホーム「終電繰り上げ」検討のトレンドに対して、不満を感じている人が多いのはなぜか(写真はイメージです) Photo:PIXTA

JRから私鉄まで「終電繰り上げ」
なぜ反対する人が多いのか

「いくらコロナで乗客が減っているからといっても、ただでさえ客足が落ち込んでいる飲食店を殺す気か!」「景気回復にも影響を与える公共交通の方針を、一企業の都合だけで勝手に決めるな!」

 JR東日本、西日本、さらには西武や京急という私鉄にまで広がってきた「終電繰り上げ」検討のトレンドに対して、こんな怒りを覚えている方も多いのではないか。

 実際、コロナ以前、総合旅行プラットフォームの「エアトリ」が20〜70代の男女831名を対象に「終電繰り上げ」について調査をしたところ、「反対」「どちらかと言えば反対」は32.5%と、「賛成」「どちらかと言えば賛成」の26.9%を上回っている。

「景気のため」「うちの店の売り上げのため」、そして「オレの懐事情のため」など様々な理由から「終電繰り上げ」に反対する方たちがいらっしゃるのだ。筆者も若い頃には、終電を逃して始発まで寒さをこらえながら待つ、などという苦い経験を何度もしたので、こういう人たちの気持ちはわからんでもない。

 が、一方で、「勝手すぎる!」「市民の利便性を優先するのは公共交通機関の使命だろ!」という勢いで鉄道会社を猛烈に批判している人たちの姿を見ると、失礼ながら「ちょっと身勝手すぎるなあ」と感じてしまう部分もある。

 世界一のスピードで少子高齢化が進行するこの国で、これまでと寸分違わない運賃で、正確で、安全で、快適な鉄道運行を続けていけ、というのはかなりご無体というか、あまりに理不尽な要求だからだ。

 たとえば、JR西日本では昨年から終電繰り上げの検討を続けていた。かなり深刻な「保守作業員の人手不足」が問題になっていた。19年10月24日のニュースリリースによれば、近畿の在来線では1日100カ所以上で約1500人の作業員が働いているというが、18年度までの10年間で作業員は約23%も減少したという。

 終電から早朝までの重労働、おまけに保守点検を担当するJR西のグループ会社はおおむね週休1日。そのようなハードな労働環境から、敬遠されている可能性があるのだ。