米大統領選テレビ討論会が「泥沼ディベート」にまで成り下がった理由Photo:The Washington Post/gettyimages

日本時間10月2日(金)、トランプ大統領の新型コロナウイルス罹患が判明した。11月3日に迫った大統領選に向けた選挙活動にも影響が及ぶのは確実だ。ここで、大統領選第1回目のテレビ討論会を振り返ってみよう。(社会学者、大学院大学至善館教授 橋爪大三郎)

「混乱の極み」と評された
第1回目のテレビ討論会 

米大統領選テレビ討論会が「泥沼ディベート」にまで成り下がった理由橋爪大三郎/はしづめ・だいさぶろう 1948年生まれ。社会学者。大学院大学至善館教授、東京工業大学名誉教授。『パワースピーチ入門』(角川新書)、『はじめての構造主義』『はじめての言語ゲーム』(ともに講談社現代新書)など著書多数

 大統領候補のトランプ(共和党)とバイデン(民主党)が直接対決する。プレジデンシャル・ディベート第1回が、9月28日夜(日本時間29日午前)に行なわれた。会場は、オハイオ州クリーヴランド。テレビ討論は過去、ニクソン対ケネディなど、多くの名勝負を生み出してきた。

 今回のディベートは、ひどいものだった。CNNはケイオティック(混乱の極み)と評した。議論がまるで噛み合わない。一抹の期待をもって臨んだ視聴者は、裏切られたと感じたのではないか。

 ルールは事前に決めてあった。司会はFOXニュースのクリス・ウォラス氏。90分を6つに分け、冒頭に双方が2分ずつ発言。あとは自由討論、のはずだった。テーマは、両候補の履歴/最高裁判事の人事/コロナ対策/人種と暴力/選挙の投開票/経済、の6つである。