長びく不況に苦しむ日本と
「ロングバケーション」

 そして“月9”史上歴代3位の平均視聴率(29.6%)を誇るのが、1996年の「ロングバケーション」です。

 木村拓哉が演じた24歳のピアニスト瀬名秀俊は、プロのピアニストになりたいという思いがありながら、自分に自信が持てず、コンテストでもよい結果を残せないでいる優等生タイプ。ピアノの演奏でも感情を出し切れず、いつも無難にまとめてしまう。

 そんな瀬名を変えるきっかけとなったのが、山口智子演じる葉山 南との出会いでした。南は瀬名よりも7つ年上の31歳。結婚式当日に花婿に逃げられるという、これ以上ない不幸を経験している女性。サバサバした感じの姉御肌で、時には思い切った行動も起こすまさに瀬名とは対照的な性格です。

 瀬名は押し掛けるようにやってきた南と同居することになるのですが、年齢差がある上、水と油のような性格の違いから、お互いに恋愛感情はなく、どちらかというと姉弟のような関係です。ところが、この“男女の仲を超越した”かのような関係から、いつしか“恋人”の関係へと変化していくのです。

 タイトルの「ロングバケーション」は、結婚が破談になった南に対する瀬名の「何をやってもうまくいかない時は、神様がくれた長い休暇だと思って無理に走らない、焦らない、がんばらない、自然に身を委ねる」という台詞から来ています。

 日本中がバブル崩壊後の長い暗闇から抜け出せずにもがき苦しんでいた当時の時代背景のなかで、焦らずに少しスローダウンしてみたら? というメッセージが多くの視聴者に響いたのではないでしょうか。

 われわれマーケッターは、顧客と企業をつなぐ心に響くストーリーをつくり上げることがミッションです。

 その時代によってドラマの登場人物のキャラクターが変わるように、顧客の共感を呼ぶ消費者の心のスイッチの場所も変わっていきます。

 時代を敏感に感じ取って表現されるドラマや映画のなかにも、それを見つけるヒントが多く隠されていたりするものです。

 何気ない日々の生活のなかにこそ、ありきたりの定量調査などでは見えてこない生きた時代の風を感じることができるのではないでしょうか。