日銀Photo by Ryosuke Shimizu

「インフレ率2%の物価目標」を掲げた日本銀行の「異次元金融緩和」は、アベノミクスの目玉政策だった。特集『アベノミクス 継承に値するのか』の#9では、「戦後2番目」に長い景気拡張を生んだこのマクロ政策のコストを検証する。浮き彫りになったのは、2000年代の量的緩和策の経験で“限界”が分かっていながら、金融緩和が長く続けられた結果、日本経済に残された深刻な傷痕だ。(ダイヤモンド編集部特任編集委員 西井泰之)

「2%物価目標2年で実現」
空証文に終わった黒田バズーカ

「マネタリーベースを2倍にして2%物価目標を2年程度で実現する」

 2013年4月、日本銀行の黒田東彦総裁の下で始まった異次元金融緩和策は「デフレ脱却」を掲げたアベノミクスの「一丁目一番地」だった。

 日銀が民間銀行から国債などを買って供給するマネタリーベース(日銀券発行高や貨幣流通高、日銀当座預金)の量を増やせば、銀行による貸し出し(信用創造)で市中に多くの資金が供給され、投資や消費を刺激するという狙いだった。

 だが、当初は円安、株高を演出したものの、物価が上昇したのは最初の1年ほどだけ。15~16年以降は実体経済や物価を押し上げる効果はほとんどなくなった。

 物価目標の達成時期は6回も先送りされ、日銀はその後、時期も明示しなくなった。黒田総裁の任期の最終年度になる22年度内の達成はすでに絶望視されている。