自民党岸田派の政治資金パーティーで岸田派名誉会長の古賀誠ら2019年5月、自民党岸田派の政治資金パーティーで岸田派名誉会長の古賀誠(前列中央)ら。10月5日に行われた今年のパーティーに、古賀の姿はなかった Photo:JIJI

 首相、菅義偉を誕生させた自民党総裁選が終わってまだ1カ月というのに、党内は早くも来年9月に再び実施予定の総裁選に向けての前哨戦が始まったかのようだ。衆院議員の残り任期は約1年。政局は1年以内に行われる「二大決戦」が絡み合い、複雑な展開を見せる。

 まず火の手が上がったのは衆院山口3区。日本海に面した萩市から瀬戸内海の宇部市を含む、山口県を南北に貫く選挙区だ。10月4日午前、同区の人口の半数が住む宇部に自民党二階派所属の国会議員総勢20人がそろい踏みした。

 会長の党幹事長、二階俊博を筆頭に元衆院議長の伊吹文明、幹事長代理の林幹雄、総務相の武田良太。片山さつき、佐藤ゆかりの女性議員も同道した。時ならぬ“大名行列”の目的は同区選出の二階派会長代行、河村建夫の応援決起集会への参加だった。事の発端は参院山口選挙区選出の元農水相、林芳正の山口3区への鞍替え立候補の動きにあった。これを聞き付けた二階は河村の尻をたたいた。

「俺が10人ほど国会議員を連れていくから大会を準備せよ」

 二階が行くとなれば、「自民党にただ一つ残った派閥らしい派閥」(自民党ベテラン秘書)の動きは素早く、ダイナミックだ。「われもわれも」と瞬く間に20人が集結。会場となった「ANAクラウンプラザホテル宇部」は異様な熱気に支配されたようだ。その空気を生み出したのも二階だった。

「『売られたけんか』という言葉がある。その挑戦は受けて立つ」