この研究における「1杯のアルコール」は、ビールなら12オンス(355mL)、ワインなら6オンス(177mL)、リカー(ウイスキーなど)なら1.5オンス(44mL)とされ、摂取量が週に1~7杯を「軽度」、8~14杯を「中等度」、15杯以上を「重度」と3群に分け、高血圧の頻度を比較した。

 血圧については、2017年時点の米国心臓病学会/米国心臓協会(ACC/AHA)のガイドラインに従い、降圧薬が処方されていない場合、120/80mmHg未満を「正常」、120~129/80mmHg未満を「血圧上昇」、130~139/80~89mmHgを「ステージ1高血圧」、140/90mmHg以上を「ステージ2高血圧」とした。降圧薬が処方されている場合は、それぞれ1段階低いカテゴリーの基準を適用した。

 年齢、性別、人種、BMI、喫煙習慣、糖尿病罹病期間、および心筋梗塞・脳卒中・冠動脈または頸動脈の血行再建術の既往などで調整した上で、全くアルコールを飲まない群を基準として高血圧に該当する頻度を比較。すると、飲酒量が重度の場合、血圧上昇のオッズ比(OR)が1.91(95%信頼区間1.17~3.12)と、頻度が2倍近く増えることが明らかになった。さらに、ステージ1高血圧はOR2.49(同1.03~6.17)と約2.5倍、ステージ2高血圧に至ってはOR3.04(同1.28~7.22)と3倍以上に増大していた。

 また、飲酒量が中等度であっても、血圧上昇のORは1.79(同1.04~3.11)、ステージ1高血圧はOR1.66(同1.05~2.60)、ステージ2高血圧はOR1.62(同1.03~2.54)と、飲酒の有意な影響が確認された。なお、飲酒量が軽度の場合は、血圧上昇のOR1.11、ステージ1高血圧のOR1.11、ステージ2高血圧のOR1.02であり、これらはいずれも有意でなかった。

 Singleton氏は論文の中で、「大量飲酒が高血圧に関連することは1915年に既に報告されている。しかしそれ以降、飲酒量が軽度または中等度の場合の血圧への影響は明確にされてこなかった。今回の研究により、糖尿病患者では飲酒量が中等度であっても、高血圧のオッズ比上昇に関連していることが分かった」と述べている。

 この報告について、米State of the Heart CardiologyのJohn Osborne氏は、飲酒量が自己申告に基づくものであり、ベースライン時の1回しか評価していないことなど、結果を解釈する上での注意点を指摘している。また「多くの横断研究と同様に、この結果は飲酒と高血圧に関連があることを示したに過ぎず、因果関係を証明する研究デザインではない」と解説。しかしそれでも、「この研究結果は、飲酒と高血圧に関するエビデンスを強化するとともに、飲酒量の閾値の再考を促す契機になる可能性がある」としている。(HealthDay News 2020年9月9日)

https://consumer.healthday.com/general-health-information-16/misc-alcohol-news-13/more-than-1-drink-a-day-ups-blood-pressure-for-diabetics-761082.html

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