今回は「デジタルとインターネットの荒波に晒されている音楽業界」について説明しようと思っていたのですが、福田内閣のある閣僚が最近とんでもない発言をしましたので、これを題材に、日本におけるクリエイティブ産業の将来を考えてみたいと思います。

 発言の主は、経済財政政策担当大臣の与謝野さんです。与謝野大臣は、8月7日の記者会見で、日本が景気後退局面に入った可能性を示唆していますが、報道によると、その中で以下のように述べています。

 「日本経済が回復局面にもう一度向かうためには、米国はじめ諸外国の経済状況に依拠するところが大きい。」

 「対外的要因が解決されれば、(日本経済は)おのずと戻ると確信している。」

 これらの発言はとんでもない誤りであり、経済政策の責任者がこうした発言をすることに憤りすら感じるのですが、それを全く問題視しないマスメディアは、政権の迷走が続く2年の間に感覚が麻痺してしまったのかなあと危惧しています。こうした発言は、以下のような間違った前提に立たないと言えないと思います。

1)日本経済に特に問題がある訳ではなく、海外経済が(サブプライムや原油高で)悪くなったから、それに引きずられて日本経済も悪くなった

2)日本経済は基本的に外需依存の構造であり、今後もそれが続くことで問題はない

 (1)が論外なのは自明です。例えば昨年の経済成長率一つ取っても、サブプライムの震源地である米国(2.2%)は日本(2.1%)を上回っています。つまり、日本経済が悪くなったのには、日本固有の要因がある。それは、構造改革の停滞であり、数々の政策の失敗による官製不況です。

 後者の代表例としては、貸金業法改正や建築基準法改正があげられます。だからこそ、昨年の株価の動きを見ると、米国では6%上がっているのに対して、日本は12%も下がっているのです。それにも関わらず与謝野大臣が誤った発言をしたのは、内閣府が「景気悪化の原因は国内要因ではなく、サブプライムと原油高」と政府与党内で説明しまくっているからなのでしょう。

 国内要因が日本の景気悪化の一因である以上、本来、政府は構造改革の推進と政策の失敗の是正に取り組まなくてはならないのですが、担当大臣がこのような発言をする以上、その望みは薄いと考えざるを得ません。