バイデン氏トランプ政権下で冷え切ってしまった米国とEUの関係。今回の米大統領選においては、欧州のいずれの国でも、バイデン大統領の誕生を望む声が優勢だ(写真はイメージです) Photo:Drew Angerer/gettyimages

バイデン氏なら修復できる?
トランプ大統領の下で悪化した欧米関係

 2017年1月に就任したトランプ大統領の下、米国と欧州連合(EU)の関係は冷え込んだ。欧米ないしは米欧という言葉が表すように、両者の関係はこれまで基本的に緊密であり、双方で政権がどう変わろうとも良好であり続けた。にもかかわらず、アメリカ第一主義を唱えるトランプ大統領は、EUに対して高圧的に振る舞い続け、両者の関係は悪化を余儀なくされた。

 トランプ大統領が誕生する半年前の2016年6月、英国でEU離脱の是非を問う国民投票が行われ、離脱派が52%の得票を得て勝利した。戦後一貫してEUの安定を支持してきた米国にとって、この結果は本来なら望ましい話ではなかった。にもかかわらず、トランプ大統領は自身の選挙戦を通じて英国民の決断を称えるとともに、EUの問題点をあげつらうようなスタンスに終始した。

 またトランプ大統領は、英国でその強引さから「ミニトランプ」とも揶揄されたボリス・ジョンソン氏が2019年7月に首相に就任した際、惜しみない称賛を贈るとともに、「離脱交渉が膠着する責任がEUにある」とEU批判を強めた。当然、EUでは反トランプとも言える機運がますます高まり、EUの若きリーダーであるフランスのマクロン大統領などは、露骨に嫌悪感を示すようになった。

 そもそも欧州では、その就任当初からトランプ大統領に対する懐疑論が強かった。トランプ大統領は選挙公約に中南米からの不法移民対策としてメキシコとの間に壁を建設すると主張、中南米諸国に対して敵意を露わにしていたが、そうした高圧的な態度が中南米諸国と歴史的なつながりが深いスペインを中心に不評を買い、トランプ大統領に対する疑心につながったのだ。