年収1000万円の大不幸#1Photo:takasuu/gettyimages

景気悪化や国の増税などによって、最も割を食ってきたのが、「勝ち組」とされる年収1000万円前後の世帯だ。税金や社会保険料の負担が年々重くなる中で、足元にはコロナ禍の影響による賞与カットなど、さまざまな危機が迫っている。特集『年収1000万円の大不幸』(全13回)の#1では、その厳しい家計の実情を探った。(ダイヤモンド編集部 中村正毅)

冬賞与なし、管理職の月給15%カット…
高年収のANAを襲う年収3割減の家計危機

「パイロットの訓練生が、語学学校の講師をやろうと近々面接を受けに行くという話を聞いて、自分の身の振り方はさておき、何ともやりきれない気持ちになりました」

 全日本空輸(ANA)で客室乗務員をしている40代の女性は、そう言いながら大きなため息をつく。

 パイロットといえば、言わずと知れた高年収の代表的な職業だ。副操縦士になれば20代後半で年収は1000万円の大台を軽く突破し、機長ともなれば2000万円の扉が開くとされている。

 高年収への扉を目前にして、訓練すらまともに受けられず、全く畑違いの仕事に汗を流さざるを得ないという悲惨な状況に、ANAだけでなく航空業界全体が、今まさに陥っているわけだ。

 ANAは社員の年末賞与をゼロとし、管理職については最大で月例給(各種手当含む)を15%カットする方針を示すなど、経営再建に向けて待ったなしの状況にある。

 年収ベースでは多くの社員が3割減となる見通しで、コロナ禍が家計破綻の大きな危機を生み出した格好だ。