橘玲の世界投資見聞録 2012年9月27日

[橘玲の世界投資見聞録]
現代の”ゴモラ”ナポリの街角で見たイタリアの闇

現代のゴモラ

 その謎が解けたのは、ロベルト・サヴィアーノの『死都ゴモラ』を読んだからだ。イタリアで100万部を超えるベストセラーになり、映画版がカンヌ映画祭グランプリを獲得する大成功を収めた本書は、「世界の裏側を支配する暗黒帝国」の副題があるように、ナポリとその周辺を拠点とする犯罪組織(クラン)と、その集合体であるカモーラの実態を描いたノンフィクションだ(「マフィア」はシチリアの犯罪組織で、ナポリでは「カモーラ」と呼ばれる)。

 著者のサヴィアーノはナポリ生まれのフリーライターで、雑誌や新聞に寄稿しながら、20代後半でこの驚くべき本を書き上げた。本書がイタリアでベストセラーになったのは、当のイタリア人ですらカモーラ(組織)の実態をまったく知らなかったからだ。

 ゴモラとはいうまでもなく、旧約聖書に出てくる悪徳の町だ。サヴィアーノは、カモーラに支配された南イタリアの町や村を、ゴモラに匹敵する悪徳の巣窟として厳しく批判する。サヴィアーノはいまもナポリで暮らしているが、内情を暴かれたカモーラ一味によって常に生命を狙われていて、警察の厳重な保護下にあるという。

いたるところに落書き。せっかくの文化遺産も台無しだ (Photo:©Alt Invest Com)

 現代のゴモラがどのようなところなのか、下の表を見てほしい。

1979年 100
1980年 142
1981年 111
1982年 274
1983年 204
1984年 155
1985年 ――
1986年 107
1987年 172
1988年 178
1989年 228
1990年 222
1991年 223
1992年 160
1993年 120
1994年 115
1995年 148
1996年 147
1997年 130
1998年 132
1999年 91
2000年 118
2001年 80
2002年 63
2003年 83
2004年 142
2005年 90

 サヴィアーノが生まれた1979年から26年間で、抗争などでカモーラが殺害した死者の数だ。ナポリの人口は100万人で、カンパニア州全体でも570万人しかいない。ほぼ同じ人口の仙台や広島、北九州で、ヤクザの抗争で毎年100人から200人が殺されているような事態を想像すれば、これがいかに驚くべき数字かわかるだろう。

下町の教会にも落書きが  (Photo:©Alt Invest Com)

 カモーラによる死者は、シチリアマフィア、ロシアマフィアなどの犯罪組織、スペインのETA(バスク祖国と自由)、アイルランドのIRAなどの政治組織による殺害数を大きく上回る。ナポリでは死は日常茶飯事で、目の前で誰かが殺されても、ひとびとは目を伏せて足早に通りすぎるだけだ。誰にも報道されないまま、ヨーロッパの中心の一角で、中東やアフリカの紛争国のような事態が起きているのだ。

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橘 玲(Tachibana Akira) 作家。1959年生まれ。早稲田大学卒業。「海外投資を楽しむ会」創設メンバーのひとり。著書に『お金持ちになれる黄金の羽根の拾い方』『(日本人)』(幻冬舎)、『臆病者のための株入門』『亜玖夢博士の経済入門』(文藝春秋)、『黄金の扉を開ける賢者の海外投資術』(ダイヤモンド社)など。
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