『独学大全──絶対に「学ぶこと」をあきらめたくない人のための55の技法』が10万部を突破! 本書には東京大学教授の柳川範之氏「著者の知識が圧倒的」独立研究者の山口周氏「この本、とても面白いです」と推薦文を寄せ、ビジネスマンから大学生まで多くの人がSNSで勉強法を公開するなど、話題になっています。
この連載では、著者の読書猿さんが「勉強が続かない」「やる気が出ない」「目標の立て方がわからない」「受験に受かりたい」「英語を学び直したい」……などなど、「具体的な悩み」に回答。今日から役立ち、一生使える方法を紹介していきます。(イラスト:塩川いづみ)
※質問は、著者の「マシュマロ」宛てにいただいたものを元に、加筆・修正しています。読書猿さんのマシュマロはこちら

【独学者の読書案内】「もう人を傷つけなくて済む方法」を知りたい人に手にとってほしい一冊Photo: Adobe Stock

[質問
 同性愛と家族についてです。今年高校3年生になった女子です。

 去年の夏、当時クラスで仲良くしていた女子の1人を好きになり告白して付き合うことになりました。恋人が出来ることは初めてではなかったので、男の子の恋人ができた時と同じように母に報告すると、「私は同性愛を認めることは出来ない」「同性同士で付き合うなんて異常だ」とはっきり言われてしまいました。私は母にこれ以上拒絶されることが怖くなってしまい、彼女とは数日で別れてしまいました。私は幼い頃の両親の離婚がトラウマになっており、母に嫌われたくない一心で生きてきました。しかし、自分を守るためだけに大切な人の気持ちを弄んでしまった自分を今でも許すことができません。

 ここで、読書猿さんに質問です。もう2度と人を傷つけないようにするために役立つ本(トラウマの克服法)と同性愛についての本を紹介してください。また、読書猿さんは同性愛についてどのようにお考えですか? よろしければ、教えてください。

知識は地面となり、あなたを支えてくれます

[読書猿の回答]
 残念ながらトラウマを克服できる方法や人を傷つけなくてすむ方法といった虫のよいものはありません。しかし、あなたの真摯さがあなたをこれ以上傷つけないように、あなたには知識が必要です。

 ご両親の離婚が、あなたには「トラウマ」となっているように、お母様にとってもおそらくは「負い目」となっています。そのこと(傷)もあって、あなたを「恥ずかしくない」人間に育てようとお母様はこれまで一生懸命でした。ですが、それはお母様の戦いであり人生です。

 私の考えでは、お母様の主張は、現代では、あなたかあなたの周囲の人間の人生を台無しにするレベルで致命的です。

 幸いなことに、あなたにぴったりな本が、今は存在します。牧村朝子『百合のリアル』という本です。

 タイトルよりずっと広い範囲のことを深く扱い、なのにとても読みやすい書物です。この書物が存在するだけでも、私達の世界は以前とは違っていることが分かります。

 あなたは、私や、この本の著者よりも、ずっと若く、つまりずっと先の未来を生きています。年長の者が手渡せるのは、高々知識に過ぎませんが、トラウマに苦しんでも、人を傷つけたことを後悔しても、戦い続ける人たちの下で、知識は地面となりあなたを支え続けます。