情報機器やコア技術などの急速な進化によって情報利用の可能性が広がり、ビジネスにも大きな影響を与えている。組織にITを導入する過程では、こうした技術面の進歩だけでなく、情報機器や技術を運用する「人」への影響についても配慮しなくてはならない。

情報機器の進化

 技術革新により、情報処理能力が向上するとともに、情報関連機器の価格が大幅に低下したことから、パソコンや通信機器の利用など、企業活動におけるITの導入は急速に拡大した。

 この分野の技術革新は、スピードがきわめて速い。ムーアの法則によると、ITの代表格である半導体は、小型化の進展と集積度の加速度的な増加により、コストが同じままで18ヵ月ごとにチップの性能が2倍になるという。実際には、規模の経済などによるコストの低下と製造技術の改良の相乗効果によって、さらに安く半導体製品を製造できるようになっている。近年、この傾向はさらに加速している。

コア技術の進化:
デジタル技術とネットワーク技術

 ITはデータベース技術とネットワーク技術を核に進展してきた。現在ではこれに情報の蓄積・移動・活用の効率を飛躍的に高めるデジタル技術が加わり、あらゆる情報のコンピュータ処理が可能になった。ここではとくにデジタル技術とネットワーク技術がビジネスに与える影響を3つの側面から考える。

■ビジネスプロセスのデジタル化による消費者の取り込み

 デジタル技術の進展によって、企業は顧客をより密接に取り込むことができるようになった。たとえば、POSシステムは販売活動から発生する顧客データをデジタル情報に変換して効果的に利用することで、顧客に対して高い価値を提供することを可能にした。また、オンラインでの株式購入や金融サービスへのアクセスなどは、顧客のパソコンを自社のビジネスプロセスに組み込むことを意味している。

■電子商取引の実現と取引コストの低下

 市場で取引を行うには、取引相手を探すコスト、成約に至るまでの交渉コスト、契約コスト、意思決定コストなどさまざまなコストが発生する。電子商取引(EC)の実現により、こうした取引コストを劇的に低下させることが可能になっている。