何歳までこの会社で働くのか? 退職金はどうもらうのか? 定年後も会社員として働くか、独立して働くか? 年金を何歳から受け取るか? 住まいはどうするのか? 定年が見えてくるに従い、自分で決断しないといけないことが増えてきます。
会社も役所も通り一遍のことは教えてくれても、”あなた自身”がどう決断すれば一番トクになるのかまでは、教えてくれません。税や社会保険制度の仕組みは、知らない人が損をするようにできています。
定年前後に気を付けるべき「落とし穴」や、知っているとトクする「裏ワザ」を紹介したシニアマネーコンサルタント・税理士の板倉京先生の話題の著書「知らないと大損する!定年前後のお金の正解」から、一部を抜粋して紹介します。本書の裏ワザを実行するのとしないのとでは、総額1000万円以上も「手取り」が変わってくることも!

老後のお金を<br />減らす可能性が高い<br />やってはいけない投資損する可能性が高い投資とは? Photo: Adobe Stock

 前項でおすすめした、金利が高い「退職金専用定期」は、使える期間が限られていて、おおむね退職後1年以内です。実際は、その先の運用期間のほうが長いので、その後どう資産運用していくかが大切です。慣れない投資に手を出して、退職金を減らしてしまう人は、大勢います。ここでは、私が「退職金を減らす可能性が高い」と思う投資をあげておきたいと思います。

 いずれにしても、資産運用をする上での鉄則は「理解できないことはしない」ことです。

利回りが3%以下の不動産投資はNG

 退職金でまとまったお金が入った人が走りがちなのが、不動産投資です。不動産業者も「不動産投資で自分年金を作りましょう」などという営業トークをしてきますが、不動産投資はそう簡単ではありません。

 「不動産投資」で、一番やってはいけないのは、利回りの悪い不動産を買うことです。利回りとは不動産購入価格に対して、年間いくらの利益を上げられるかの指数です。2000万円で買った不動産が、年間60万円の家賃を稼げば「表面利回り」は3%です。でも実際は、固定資産税や借入利息、管理費や修繕費などがかかるので、「実質利回り」はさらに低くなります。

 不動産投資をやってもいいといわれる「表面利回り」の目安は6%以上ともいわれていますが、現在は不動産価格が高騰していることもあり、3%程度やそれ以下の利回りでも買ってしまう人も多くいるようです。でも、これはとても危険です。

 表面利回り3%では、ローンの利息や、管理費、固定資産税など払っていくと、手取りは期待できません。ひどい場合には、ローンを返すために預金を取り崩す人もいます。

 もちろん、不動産投資から得られる利益には「家賃による利益」だけではなく、「買った金額よりも高く売れた場合の売却益」もあります。ただ、不動産価額がバブル並みに高くなっている今のような時期は、家賃による利回りが低くなるだけでなく、売却益が出る可能性も低くなりますので、不動産投資には不向きな状況であると考えたほうがいいでしょう。

手数料の高いファンドラップ・投資信託

 金融機関が力をいれてすすめる商品の共通点は、「手数料が高いこと」です。前項であげた定期預金と抱き合わせの投資信託やファンドラップもそうですが、大手金融機関が力を入れてすすめるものの手数料は必ず確認してください。手数料には、購入する時にかかる手数料と運用している期間中にかかる手数料がありますが、手数料2~3%なんていう商品もざらにあります。たとえ運用利回りが2%出たとしても手数料を2%以上取られていたら、元本割れしてしまいます。投資信託やファンドラップなどの運用商品はプロに運用を任せるわけですから、手数料ゼロというわけにはいきませんが、1%を切るような手数料のものもたくさんありますし、中には、0・1%を切るものだってあります。手数料が安ければいいとはいいませんが、手数料が高ければ儲かる可能性は低くなります。手数料が低くてよいパフォーマンスを出す商品もあるのです。営業マンの言いなりになって高い手数料のものを買うことは、やめたほうが無難です。