「ややこしい話をシンプルに説明する人」や「瞬時に自分の意見を出す人」を見ると、多くの人が「この人は頭がいい」と感心する。なぜ「頭のいい人」は、いつでも「スジの良い意見」や「わかりやすい説明」ができるのだろうか。
会員数100万人超の「スタディサプリ」で絶大な人気を誇るNo1現代文・小論文講師が、早く正確に文章を読み、シンプルでわかりやすい説明ができる頭の使い方を『対比思考──最もシンプルで万能な頭の使い方』にまとめた。学生から大人まで「読む・書く・話す」が一気にロジカルになる画期的な方法で、仕事や勉強に使える実践的なものだ。本稿では、特別に本書から一部を抜粋・編集して紹介する。

対比思考Photo: Adobe Stock

議論の要点を「対比」で的確にとらえる

 学問は“メガネ”にたとえられることがあります。とくに人文社会科学では、学術用語が“それ”なしには見えなかったものを見えるようにしてくれる“メガネ”になってくれます。

 この“メガネ”をかけていただくために、日本で実際にあった裁判の話からこの章を始めたいと思います。輸血をめぐる裁判です。立場や考え方、イズムによって本当に対照的・対比的になる事例です。

 裁判にいたるいきさつは次のとおりです。

 重い病気で手術を受ける予定の患者がいました。ところが、宗教上のポリシーから輸血はしないでほしいというのが患者側の要望です。この点、家族も同意していました。この患者は文書も作成し、手術中に緊急事態となり、輸血が必要となる場合でもしないでほしいこと、それによって死にいたったとしても医療者側の責任は一切問わないことも医療者側に伝えていました。 オペの最中、輸血しないと危険な状態になってしまったのです。患者は麻酔で意識はありません。そこで医療者側の判断で輸血を実施しました。これに対して術後、患者側が裁判を起こしたのです。

 一般的な医療ミスに関連した訴訟ではないことはすでにお分かりですね。

 医療者側の主張は、生命に関わる判断については患者本人であっても自己決定の裁量とは言えない、医師は医師の責務として生命の尊厳を尊重するという趣旨のものでした。通常、自殺未遂で搬送されてきた患者に対しても救命救急医は本人の死にたいという意思に反しても命を救います。それほど命には重みがある。これはSOL(サンクティティ・オブ・ライフ=生命の尊厳)の考え方です。

 さて、裁判の行方ですが、東京高等裁判所の判決では、どうなったか。