投資信託が停滞している。投資信託協会のホームページで公募の株式投信の8月末時点での純資産額を見ると、48兆円強しかない。公社債投信の残高も10兆5000億円ほどなので、合わせても60兆円に満たない。個人金融資産が1500兆円あるといわれる中で、この額はいかにも小さい。

 伸び悩んでいるのは、なぜか。端的にいって、投資家がもうからないからだろう。

 直接的には、長年続く株価の低迷が痛い。普通の人は、リスクを取ると平均的にリターンが高いという期待がないとリスクを取りたくない。昨今のような株価の推移では、「ハイリスク・ハイリターンの原則」を一般人に説いても説得力がないし、ついにはこの原則を説く側(金融マンやファイナンシャルプランナーなど)も自信が持てなくなりつつある。

 理屈の上では、日本の人口が減っても、経済が低成長であっても、それが十分織り込まれた株価が形成されれば、株式はリスクに見合ったリターンを生むはずなのだが、この状況ではリアリティがない。筆者は理屈に忠実な(つもりな)ので、日本経済に対する過小評価が極まって十分株価が下がったところで買った投資家は、将来大もうけできる公算が大きいと申し上げておくが、投信ビジネスが当面苦しいのは仕方がないとも思う。

 例えば、2年続けて年間2割くらい平均株価が上がってくれると、投信ビジネスの風景が変わるはずだが、追い風を待たなければどうにもならない側面はある。

 もう一つの問題は、手数料が高過ぎることだ。投資信託の手数料については、手元に正確なデータがないが、国内株式に投資するアクティブファンドで販売手数料が2%台後半、信託報酬が年率1.5%くらいだろう。新興国に投資するようなファンドの場合は、もう少し高くなる。投資した初年度は、投資額の4%くらいが手数料で消えることになるし、継続的にかかるコストである信託報酬だけで長期金利(現在約0.8%)の倍近いお金を払い続けるのだから、投資家がもうけることが容易ではない。まして、ファンドの乗り換えを勧めるような営業マンと付き合ってしまった場合には、手数料を取り返すためにリスクを取って運用するような状況になる。