「円高ではなくドル安」という怖さ、いま見極めるべき為替リスクとは2021年に入って、本当に100円割れは起きるのだろうか(写真はイメージです) Photo:123RF

「円高ではなくドル安」という認識
麻生財務相の発言は事実

 今年も残すところ3週間あまりとなった。金融市場も新型コロナウイルスに振り回された1年であったが、リーマンショック後に見られたようなヒステリックな円高は抑制され、日本経済の構造変化と共に「リスクオフの円高」の威力も弱まっているという事実が確認された。

 とはいえ、ドル/円相場が月を追うごとに下値を切り下げているのは事実であり、2021年における100円割れを警戒する声は、日増しに強まっている印象がある。

 先月11月19日、麻生財務相が参院財政金融委員会で、足もとの為替市場で円高・ドル安が進んでいることについて問われ、「ドル安という表現が正しく、結果として円が高くなっている」と答弁することがあった。こうした言動が市場で材料視されたわけではないが、近年のドル/円相場では平穏な状況が続いてきただけに、野党議員が問題意識を示し、それに財務相が回答するという場面自体がどこか懐かしいものに思えた。それだけ現状のドル/円相場が、永田町(政治家)でも気になる水準になりつつあるということかもしれない。

 麻生財務相の発言は事実である。米大統領選直前から米10年金利は浮揚を始めており、日米金利差もしくは欧米金利差は拡大傾向にあるのだが、ドル相場は低位安定している(図表1参照)。

 米10年金利が「0.5~1.0%」で推移しているうちは「ゼロ金利を継続するFRB」が相場の前提となっているように見受けられ(1.0%付近はちょうどゼロ金利導入前後と同水準)、この程度の金利上昇ではドル買いで応戦できない現実が透けて見える。

 なお、「円高ではなくドル安」という麻生財務相発言を勘繰る向き(円売り介入に消極的など)もあろうが、あくまで事実を指摘しただけであろう。