9月21日、厚生労働省の分局である関東信越厚生局が発表した行政処分に、医療界に動揺が走った。

 茨城県・阿見町にある東京医科大学茨城医療センターが、保険医療機関としての指定を取り消され、健康保険が使えなくなってしまったのだ。行政処分の開始は12月1日からで、原則的に5年間は再指定を受けられない。

 取り消しの理由は、2008年4月~2009年5月の間に合計1億円を超える医療費を不正に健康保険や患者に請求していたというもの。

 健康保険が使えなくなると、その病院を受診する患者は全額自己負担で医療を受けなければならず、周辺住民は大打撃を受ける。

 同センターは30弱の診療科を備える総合病院で、高度な手術や化学治療、救急車の受け入れも行なっており、地域医療の中核的存在だ。周辺地域の医療に大きな影響が出るので、めったなことで大学病院の保険医療機関取り消しは行われない。

 地域医療の崩壊が叫ばれている今、厚労省も同センターが地域で果たしている役割は十分に承知しているはずだ。それなのに、こうした厳しい行政処分に踏み切ったのは、今回の不正請求が相当に悪質だと判断したからだろう。

 いったい、どのような不正請求が行なわれたのだろうか。

看護師の人数などを充実させると
通常よりも高い医療費を請求できる

 健康保険が適用される診察、投薬、手術、入院などの医療行為は、国がひとつひとつ価格を決めており、診療報酬と呼ばれている。たとえば、初診料は270点などと決まっており、実際に行った医療行為の点数を積み上げ、1点あたり10円かけたものが医療費の総額になる。