総予測#23Photo by Kazutoshi Sumitomo

2020年、未曾有のコロナ禍が日本を襲来した。21年も経済の完全回復の目処が立たない中で、メガバンクグループはどんな役割を果たすのか。特集『総予測2021』(全79回)の#23では、みずほフィナンシャルグループの坂井辰史社長に21年の予測と注力分野を語ってもらった。(ダイヤモンド編集部 田上貴大)

「週刊ダイヤモンド」2020年12月26日・2021年1月2日合併号の第1特集を基に再編集。肩書や数値など情報は原則、雑誌掲載時のもの。

みずほトップが語る2021年
日本はDXの遅れと脆弱性が露呈した

――2021年はどのような一年になると予測しますか。

 まずはコロナの行方をよく考えないといけません。ワクチンの開発は急速に進み、明るい兆しが見えています。ただし、感染拡大第2波や第3波の問題もあり、ワクチンも当初の想定よりゆっくり世界中に行き渡るでしょうから、経済回復のペースは緩やかになります。

 一方で、ECやリモートワークが急速に伸びるなど、企業の活動や個人の生活様式が変わり、DX(デジタルトランスフォーメーション)が加速します。菅義偉政権が2050年のゼロエミッション(温室効果ガスの排出ゼロ)を目指すなど、グリーンリカバリー(環境対策を通じた経済再生)の動きも拡大するでしょう。

 こうした大きな構造的な変化を、経済を回復基調に戻す上での一つの動機にする必要があり、日本のさらなる成長戦略につなげられるかどうかも問われます。

 コロナ以外のリスクでは、地政学要因が大きい。米国がジョー・バイデン政権になっても米中関係は一気に好転しないでしょうし、中東情勢も不安定化しています。気候変動に伴い、日本の風水害問題も看過できなくなっています。あとは、高度化が進むサイバーリスクです。DXを進める中で、その基盤が損なわれかねません。

 この中で銀行業界では、アフターコロナに向けた企業の事業構造改革にコミットする活動が、今まで以上に活発化するでしょう。

 個人の顧客も、コロナで将来や健康への不安が増大しています。資産形成や事業承継など、日本の構造課題に対応する活動が本格化する年になります。

――菅義偉首相がデジタル庁の創設を打ち出すなど、2021年は官民を挙げたデジタル化の加速が予測されます。デジタル化の取り組みや、その波及効果についてどう考えますか。

 日本は先進国でありながらも、コロナによってDXの遅れが明らかになり、同時に、緊急時のオペレーションの脆さというかたちで、日本社会の脆弱性が露呈しました。