米国の雇用回復が暗転しても、景気の底割れ回避が期待される理由コロナショック後の回復局面で、米国の雇用者数が8カ月ぶりのマイナスに。コロナ第3波の影響はどれほど深刻なのか(写真はイメージです) Photo:Spencer Platt/gettyimages

1月8日に発表された2020年12月の米国雇用統計では、コロナショック後の回復局面で初めて雇用者数が減少した。特に、感染拡大を受けて行動制約が再強化されたことが、飲食店などサービス業を直撃している。足元でも感染拡大に歯止めがかかっておらず、今後も雇用環境は停滞する恐れがある。昨年末に成立した追加経済対策やワクチン普及で、景気の底割れは回避されるのか。雇用環境持ち直しへの期待を検証する。(伊藤忠総研 主任研究員 笠原滝平)

コロナショック後の回復局面で
雇用者数が8カ月ぶりのマイナスに

 2020年12月の米国雇用統計では、非農業部門雇用者数が前月差▲14万人と、8ヵ月ぶりの減少に転じ、コロナショック後の回復局面で初めてのマイナスとなった。

 コロナ禍の雇用者数は、3~4月の2カ月で2000万人超減少し、コロナ前(2月)の85%の水準まで落ち込んだ。その後は回復が続いたが、第3波による感染拡大に伴い、趨勢的に増勢は鈍化し、直近でも94%の水準に留まっている(図表1参照)。

 また、2020年暦年ベースでは、前年から937万人減少し、2009年以来11年ぶりの減少となった。なお、リーマンショックがあった2009年は505万人の減少であり、今回はその2倍近い減少幅であった。

米国の雇用回復が暗転しても、景気の底割れ回避が期待される理由

 業種別に確認すると、製造業や建設業など生産関連では11月から雇用者数がわずかながら増加した。一方、民間サービス部門は▲19万人と8カ月ぶりの減少に転じた。

 サービス業の内訳では、一般小売店を中心に小売業が増加に転じたほか、卸売業や運輸業など財に関わる分野は増加した。今年はオンライン販売が年末商戦をけん引し、マスターカードの調べでは全体で前年を3%程度上回ったとされるなど、コロナ禍でも小売は総じて底堅かったことが、関連業種の雇用にも影響したとみられる。