現場で役立つ会計術#8Photo:SOPA Images/gettyimages

特集『現場で役立つ会計術』(全17回)の#8では、日本でも名の知れた外資系企業、米デュポンや米3Mの日本法人でCFO(最高財務責任者)を務めた現場のプロが「外資流」のキャッシュ管理などの会計術を実務的な視点から指南。さらに、GAFAM(米グーグル、米アップル、米フェイスブック、米アマゾン・ドット・コム、米マイクロソフト)をはじめとしたトップ外資の会計を語る上で欠かせない財務エリート人材「FP&A」とは何なのか。日本でこの組織の導入を試みているNECの事例と併せてひもとく。 (ダイヤモンド編集部 竹田幸平)

外資より「3周半」は遅れている
日本企業の会計リテラシー

「日本企業の会計リテラシーは欧米企業と比べ、全体として3周半は遅れている」――。企業会計に詳しい東京都立大学の松田千恵子教授の評価は手厳しい。

 外資が全て先進的ではないにせよ「欧米企業は数値管理の意識が徹底し、常に資本効率を見ている一方、日本企業は事業別のBS(貸借対照表)すら作っていない企業も少なくない」とし、課題が山積していると話す。

 そして外資流の事業管理を行う上で、松田教授が最も重要なツールだと話す存在こそが、本特集で豊富な実例と共に紹介してきた(財務会計ではなく社内向けの管理に用いる)管理会計なのだ。

 もちろん管理会計自体は日本企業も多用しているのだが、ワールドクラスの企業との最大の違いについて、米ボストン・コンサルティング・グループの日置圭介パートナー&アソシエイトディレクターは「キャッシュをベースに考える姿勢が徹底できているか」だと分析する。

「日本企業はPL(損益計算書)から入ってBS、CF(キャッシュフロー)と考える傾向にあるが、外資系企業では企業活動の本来の流れに沿って、キャッシュから入りBSがあり、PLを考える。そうした真逆のアプローチが、事業に対する見方に根本的な違いをもたらしているのではないか」(日置氏)というわけだ。

 このようなマインドの差が、当然ながら実務的なノウハウの違いや結果にも表れてくる。そこで次ページ以降、2020年まで米デュポン日本法人で取締役副社長(CFO〈最高財務責任者〉)を務めた東京都立大学大学院の橋本勝則特任教授と、米3M日本法人の代表取締役副社長執行役員(CFO)を経て、昨年より同社社長を務める昆政彦氏に聞いた、外資流会計術の要諦を実務的な視点からひもとく。

 さらに、両氏が重要な存在だと話し、GAFAM(米グーグル、米アップル、米フェイスブック、米アマゾン・ドット・コム、米マイクロソフト)をはじめとするトップ外資において、CFO直下で事業をサポートする役割を担う財務エキスパート人材「FP&A(Financial Planning & Analysis)」が果たす役割について解説。日本企業では珍しく、このほどFP&Aを組織に導入しようと試みているNECの事例と併せて見ていこう。