交渉上手Photo:PIXTA

日本人同士の交渉では、とかく「なあなあ」な話し合いに陥ってしまいがちだが、契約締結後に問題が起こってから相手に文句を言っても後の祭り。新著『交渉上手』を上梓した弁護士の嵩原安三郎氏が、交渉時に絶対行うべき、相手に逃げ道を作らせないテクニックを教授する。

「根拠付きの言質」を
取ることに全力を注ぐ

 相手に逃げ道を作らせない、というのも、手強い相手を思い通りに動かす交渉テクニックの1つです。

 交渉で何度も顔を合わせているうちに、徐々に、気心の知れた間柄に感じられてくるでしょう。その雰囲気を利用して相手から情報を引き出すというのも、もちろん考えられます。

 しかし、重要なところは絶対に「なあなあ」にしない。そういう強い意志も持ち続けなくては、最後のツメの部分で劣勢に転じる可能性があります。

 相手が「Aです」と言ったら、あとあと「本当はAではなかった」と言葉を覆されて泣き寝入りとならないよう、「根拠付きの言質」を取ることに全力を注ぎましょう。

 たとえば、土地売買の交渉で、よく議題に上るのは「土壌汚染されていないか」という点です。その土地が、化学物質を扱う工場の跡地だった場合などには、必ず確認しなくては安心できません。こういうときにツメが甘い人は、「この土地は安全です」「ちゃんと自社で調査したところ、全項目で問題ありませんでした」といった相手の言葉だけでOKとしてしまいがちです。

 でも、もし相手がウソを言っていたら? あるいは「自社の調査」がいい加減なものだったら? あとから独自の調査を行って「じつは土壌汚染されていた」とわかっても、契約締結後では、どうすることもできません。